「花ホテル」南仏を舞台とした元ロシア貴族の別荘をホテルとして運営する【あらすじ・感想】

「花ホテル」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「花ホテル」を読んだきっかけ

10年前フランスでたまたま文庫本を見かけて読みました。南仏で夏の物語、と思っていた時に見つけた本です。

読み始めたのは私自身が転職を考えていた時です。主人公が駐在員をやめて現地で仕事を探す話、ホテルの女性オーナーも離婚歴があり、いろいろ失敗しているのだな、と思いつつ読みはじめました。

どんな小説?

南仏を舞台とした、元ロシア貴族の別荘をホテルとして運営していく話です。ホテル客や従業員をめぐる事件を描いた短編が10編。全体で一つの流れになっていて、最終的には長編として読めます。

この著者の書く「御宿かわせみ」の南仏版、と思っていただいて大丈夫です。波乱万丈、ホテル運営に事件はつきもの、という読む分には楽しい話が並んでいます。

あらすじ

ホテル経理・経営補佐のポストに応募しようと、佐々木氏はイタリアから車を飛ばします。南仏の山の中、急カーブが続く中に現れる風光明媚な村、エズ。そこで日本女性オーナーと面接を行うのですが早々にホテルのトラブルに巻き込まれます。

まだオープン前、料理人や古くからの知り合いのスタッフしかいないというのに、誰がホテルに嫌がらせをしようとするのか。こういったトラブルの解決に走るうちに、独りでは賄いきれないホテル経営を手伝うことに話はまとまっていきます。

住み込みの仕事で、共に働くうちにオーナーの過去にも触れることになります。オープン時のセレモニーも一筋縄にはいかず、営業が軌道に乗るまで、と奮闘するなかでも様々な顧客が訪れます。新婚カップル、ひきこもり男性、モンテカルロ、カジノへの客など。

佐々木氏にもオーナーにも人脈があり、欧米の客も多いのですが、日本人も現れます。新婚旅行でもめてしまった新妻を助ける場面もあり、ホテル営業の臨機応変さを見せつけるような内容です。

しかしもめるのは新婚旅行の客だけではないのです。女性オーナーの前夫が恋人と現れたり、そしてその恋人が途中で消えてしまったり。

南仏の豪華な雰囲気を保ちながら、顧客関係の複雑さに頭を悩ますスタッフ陣。お客様の噂ははしたない、言いつつ皆で情報を寄せ集め、事件解決につとめ、無事にお客を送り出していく毎日が続きます。

個性的な建物、筋のいい顧客、いろいろな問題が起こりつつも、顧客は途絶えず、経営は順調に進むと思われました。

しかし突然、足元をすくわれて、ホテルの行き先が危うくなります。オーナーはホテルを手放さなければならないのか。このロシアの気品を残した屋敷は跡形もなく変えられてしまうのか。このピンチ、ホテルスタッフは対応していけるか、最後の最後は思わぬ展開を迎えます。

読んだ感想

昭和の終わりの作品で、表記や雰囲気に少し古風なものを感じます。どこがフランス人の名前なのか、これはあまりヨーロッパな雰囲気が出ていない、取材旅行に行って書いたのだろうか、と思わせる表記もありますが、全体的には南仏の乾いた空気が流れている感じが味わえます。

今ドラマ化するなら、いろいろ設定は変わると思いますが、大筋楽しい異国風な感じが味わえる、大人なドラマができあがるんじゃないか、処女信仰のような考え方はとても昭和、これを活かしてドラマにするならどんな風に書き換えられるだろう、昭和な親父さんも登場します。

これを昔の雰囲気で押していくのも一手、今風にがらりと雰囲気を変えるのも一手、思いつつ楽しく読んでしまえる本です。もちろんこのまま雰囲気を楽しむのもいいと思います。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。

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