「アンダークラス」ベトナム人の技能実習生の介護士が関わるミステリー【あらすじ・感想】

「アンダークラス」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「アンダークラス」を読んだきっかけ

経済誌などで記事を連載していたり、インタビューが載せられている相場英雄さんですが、今回は何かと話題になっている外国人技能実習生について取り上げた小説を書いたので読んでみました。

最近は米政府の人権報告書で日本の技能実習生のことが取り上げられたり、多くのベトナム人技能実習生や留学生が所在不明になっているとの報道があったりと、何かと話題になっているテーマです。

以前に書かれた食品偽装を取り上げた「震える牛」がヒットし、ドラマにもなりました。

どんな小説?

技能実習生だった外国人女性とその人を使っていた企業、そして関連する業界のことを描いて、その中でどのようなことが行われているのかを題材にして、ミステリー小説にしています。

「震える牛」「ガラパゴス」に出ていた警視庁の捜査一課の継続捜査班の田川警部補が捜査してゆく内容になっています。

あらすじ

秋田県能代市で高齢者施設の入居者藤井詩子さん(85)が早朝に車いすごと水路に転落して水死します。 介護していたベトナム人介護士のアインは、本人がガンを苦にして自殺するのを手伝うよう頼まれて、車椅子を押したことを証言します。

しかし取り調べに当たった警視庁捜査一課の田川警部補は不審に思い以前にアインが働いていた神戸の縫製工場などに聞き込みに向かいます。アインが働いていた縫製工場で待遇はとても酷く、深夜まで働いても給与が低く休みが少ないどころか、反抗的な実習生は大型犬用の檻に監禁されたりしていました。

一方、ネット通販大手のサバンナのマーケティング部長の山本は、部下で愛人の課長補佐の中村から、証拠の音声を消去したことを知らされます。 アインを秋田県警で再び取り調べる田川と樫山ですが、犯罪を犯した容疑者はへそを取調官に向けないという田川の経験と違い、アインは普通に取り調べを受けています。

その時、田川は以前にサバンナの山本に聞き込みに行った際に、山本が外国人のように足を組んで応対したことを思い出し、外資系企業の社員だからそのような態度を取ったのではなく、へそをこちらに向けない姿勢を取っていたのかもしれないことに気づきます。

そして山本の事件前の動向を探りますが、顔認証ソフトで各地の駅などの防犯カメラを調べると、事件の前日に秋田の能代に行っていたことが解ります。

介護者のアインから神戸での待遇を聞いた入居者の藤井さんは、サバンナのコールセンターに電話して、山本が下請けの親族の女性と交際して、妊娠させたのちに一方的に分かれたことから、相手が自殺したことや、様々な接待を受けていたことを何回か話していたのでした。

そのことは課長補佐で恋人の中村がもみ消しましたが、山本は自分がそれが原因で左遷されることを恐れて、アインに大金を払い水路まで連れてこさせて、自ら藤井さんを水路に突き落としたのでした。

アインへの連絡は中村が行っていたのでした。 山本と中村を別々に取り調べて、山本には中村への愛情がない事を間接的に聞かせたので、中村も山本のやったことを認めて、山本も自白したのでした。

読んだ感想

毎回、話題になっている経済関係の事柄を素材に使い、ミステリー小説を書いている相場英雄さんですが、本作でも外国人技能実習生とそれに関わる企業や、その製品を販売する大手のプラットフォーマ企業を素材にして、上手くミステリー小説にしていました。

そこに関わる企業やその内部がどのような物なのかがよく解る小説になっていました。このシリーズの特徴として、犯罪の実行面やその証拠を得る際の描写があっさりしすぎていて、リアリティー不足な面はありますが、それを入れても全体的に読みがいのある小説になっていました。

「震える牛」「ガラパゴス」にしても、その業界批判の面も大きいのですが、やはりそれを自ら利用する消費者というものがいかに一部の人達を犠牲にしているのかがよく解りました。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。

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