「中野のお父さん」文豪や本にまつわるミステリー【あらすじ・感想】

「中野のお父さん」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「中野のお父さん」を読んだきっかけ

図書館で以前見かけた際に、面白そうだなと思い気になっていたのですが、その時は借りずに読む機会を逃したままになっていたので、数年越しに別の図書館で見つけ、先日借りて読みました。

どんな小説?

「中野のお父さん」は、北村薫さん作の、文豪や本にまつわるミステリーを描いた短編集です。ミステリーと言っても、人が死ぬような大きな事件が起こることはなく、ジャンルでいえば日常の謎を解くミステリです。

また、探偵役が推理をするというよりは、様々な本に載っている、一見つながることのなさそうな情報を繋ぎ合わせて謎を解決する、知識の多さがものをいう類のミステリです。

あらすじ

主人公・田川美希は、文宝出版に勤めるアラサー女子。元々大学までバスケットボールをやっていた彼女は、持ち前の体力と明るさを武器に、多くの小説家の先生たちを相手に、日々原稿を依頼したり、上がってきた原稿をチェックしたり、雑誌に載せる特集記事を書いたりと日々大忙しに、ですが充実した日々を送っています。

そんな美希は小説家の先生達や会社からの人望も厚く、ちょっとした愚痴に始まり、相談事などを聞かされることもたくさん。足で稼げば解決できる内容であれば問題ないのですが、頭を使う内容や、知識が必要な内容は、未希には少し苦手分野。

ですがそんなとき、未希には心強い味方がいるのです。それが、未希の実のお父さん。東京都中野区に住んでいるお父さんは、定年間近の高校の国語教師。趣味は読書と古本の収集。気になったことはとことん調べないと気が済まない性格で、とにかく本に関する知識量が多い人。

そんなお父さんに、未希の勤める編集部で起こった、「一昨年雑誌の賞に応募された作品が、今年の賞の最終候補に残ってしまった事件」の話を愚痴交じりにしたところ、お父さんはその謎をたちまちのうちに解いてしまいました。

そこから、未希は職場で何か謎が発生したり、小説家の先生から気になる話を聞くたびに、親孝行もかねて実家へ戻り、お父さんにそのちょっとした謎の出来事を話しては、謎を解いてもらう日々が始まりました。

とある作家へ女流作家が残したと思しき手紙の謎、雑誌に使うために撮られた写真の謎、吉原について詠まれた句の解釈の謎、マラソンに出場した課長のゴール時間の謎、サイン本について書かれた巻末エッセーの謎、戦前に起こった殺人事件の謎、外れの宝籤を狙った強盗の謎、などなど。魅力的な謎をお父さんが鮮やかに解き明かしてくれます。

読んだ感想

著者である北村薫先生の知識量に圧倒された一冊でした。私が不勉強なことも当然あるのですが、雑誌や本にまとめられている実際の文章を元に謎を組み立て、その謎を解き明かすための答えの本や記述を実際に用意しているのは凄いなぁと感じました。

新しく知る事ばかりで、文豪の事が多く書かれているのですが、読んでいると昔の文豪の人の事が少し身近に感じられるような気がしました。お父さんと娘である美希とのやり取りもこざっぱりしていて良いです。

あまりべたべたしすぎていないけれど、お父さんは娘のことが可愛くて仕方ない感じだし、娘は娘で、程よい感じでお父さんに甘えている。そして会話をするさまは二人ともとても楽しそう。いい親子関係だなと思いました。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。電子書籍はありません。

他の電子書籍サイトでも「中野のお父さん」の電子版は読むことができません。

honto では、紙の本を購入することができます。

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