「砂の女」安部公房の代表作。人間とは何かを考えさせられる不条理小説

「砂の女」がどのような作品なのか、読者による小説のあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「砂の女」を読んだきっかけ

高校の現代文の教科書に安部公房の短編が載っており、その時に面白いと思った記憶から、大人になってから本格的に読みたいと思ったのがきっかけです。安部公房の作品の中でも「砂の女」は最も名が知られている作品の一つでもあり、手に取りやすい中編でもあることから、読んでみました。

どんな小説?

「砂の女」は、人間とは何か?ということを問いかける不条理小説です。人間が日頃当たり前と思っているものを強制的に奪われた時、その人間には何が残っていて、いったいどんな行動をするのかということが、不思議な物語によって語られて行きます。

一見荒唐無稽に思えますが、登場人物の描写は生々しく、作者の問いかけを考えざるを得ない迫力と普遍的なテーマ性を持っています。

あらすじ・ストーリー

教師である主人公の男は、昆虫採集が趣味で。休日に砂丘に出かけていきます。虫のことだけを考えて突き進む中、帰ることができなくなった男は、寂れた村に一泊することになり、砂の穴の中にある奇妙な家で、女主人の歓待を受けたのでした。次の日、目が覚めると砂の穴底と地上をつなぐ梯子が外されており、男は閉じ込められたことに気づくのです。

自分は教師である、法律が許さない、一人前の人間であると男は主張しますが、やがて砂の穴の中では、一般社会では通用したものが、一切意味を成さないことに気づきます。職業や法律の庇護を失った人間に一体何が残るのか?というと、それは食欲などの生きるための欲求、労働に従事すること、そして性欲でした。

最初は脱出を試みようとする男でしたが、砂の穴の中での生活が長くなるうちに、人間の素の部分が剥き出しになっていきます。毎日砂の穴の中で落ちてくる砂をかき出し、生きるための食事や睡眠をとる日々。ついには男は家の女主人と交わります。

こうして社会的な常識をすべて捨て去り、身も心も人間の自然の姿に近づいていきます。そして地上にいたことの自分が果たして本当に自由であったのか、意味のある人生を送っていたのかという疑問が頭に浮かんでいきます。

やがて女主人は妊娠し、子供を産むために地上へと運ばれていきました。穴には地上へとつながる梯子がかけたままで、男はいつでも逃げ出せる状況でしたが、男は逃げません。砂の穴の中からの解放、自由という状況がそこにあるのに、男はそれを掴み取ろうともせず、穴の中に居続けるのでした。

読んだ感想

不条理小説と言うと、小難しい印象がありますが、この「砂の女」は非常に読みやすい不条理小説です。何故なら、現実にはあり得ない不可思議な舞台設定ながら、人間描写がリアルに描かれており、さらに次はどうなるのかというサスペンス性も兼ね備えています。

何度も読んでメタファーなどに頭を使うのが主の小説とは違って、物語としての面白さが十分にあり、不条理という概念に慣れていない読者でもエンタメとして読むことができる点が良いと思います。もちろん、人間とは何か?自由とは何か?といいテーマは、普遍的かつ答えのない問題であり、小説を通して、深いテーマ性に考えを巡らせることができます。

一度だけでも面白く、二度読み三度読みにも耐えうるテーマ性を持った傑作だと思っています。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。電子書籍はありません。

他の電子書籍サイトでも「砂の女」の電子版は読むことができません。

honto では、紙の本を購入することができます。

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