「あらゆる場所に花束が……」は既存の文学を破壊する小説

「あらゆる場所に花束が……」がどのような作品なのか、読者による小説のあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「あらゆる場所に花束が……」を読んだきっかけ

この本を読んだきっかけ 創刊100周年を越える老舗の映画雑誌で評論家としてコラムを執筆している著者が、小説家として第14回三島由紀夫賞に輝いた本書のことは気になっていました。

2001年に新潮社から発行されている単行本サイズはいま現在ではなかなか手に入りませんが、 ようやく見つけたのは大手古書チェーン店を気長に巡っていた時です。著者自身の手によって装幀されているブックカバーも斬新なデザインで異彩を放っていたために、即決で購入しました。

どんな小説?

これまでの日本文学のように分かりやすい起承転結やストーリー性、「感動作」「泣ける」といったベストセラーの帯に有りがちなキーワードは一切否定している1冊です。

更には著者の中原昌也による「文筆活動は片手間の小遣い稼ぎ」や、「文学の世界から身を引くことになったとしても何の未練もない」といった挑発的なメッセージも賛否両論を呼んでいます。

自らの苦難に満ちあふれた人生をひたすらに愚痴り続けているような、独特な語り口にも引き込まれていくことでしょう。

あらすじ・ストーリー

青年のコミュニケーション能力を向上させるための研究所「醜いアヒルの家」では、社会的な弱者たちが指導係の小林に拳銃を突き付けられたり肉体的な暴力を振るわれながら無理矢理に絵ハガキを描かされていました。

完成した絵ハガキは素人の書き殴りのようなものばかりで、お世辞も見栄えのする出来とは言えません。その中の1通が陽子という女性が経営する美容室に送り届け届けられます。

ハガキの裏側に何やら脅迫文めいたメッセージが書き付けられていることに気が付いたのは、つい最近になって陽子の下でアルバイト店員として雇われて働き始めたばかりの恵美子です。メッセージの表向きは警備会社からのお知らせと称して防犯サービスへの加入を促すものですが、断ればどんな被害に遭うのか分かりません。

陽子は以前に小林という男と短期間だけ結婚をしていました。その元夫・小林の異常な振る舞いに悩んでいた陽子。

バイトの恵美子と今後の対応について相談していると、ひとりの中年男性が客として美容室にやって来ました。

その男の名前は岡田康雄、職業はルポライター。

取材対象は海外の難民キャンプの現状から日本国内で発生している未解決の事件まで。陽子が髪を切っているあいだでもやたらと饒舌な岡田は、いま現在取材している不可解な事件について詳しく教えてくれます。

このお店が何かのトラブルに巻き込まれているのであれば、岡田は力になってくれるそう。ふたりは協力して小林の行方と真相へと迫っていくが…

読んだ感想

今にもはち切れんばかりの肥満体を地味な灰色の縞模様が入ったTシャツに包んで、見るからに暴力的な雰囲気を醸し出している小林には生理的な嫌悪感を抱いてしまいますね。

クラシック音楽が優雅に流れる小綺麗な美容室を切り盛りしながら、常連客を最先端のヘアスタイルへと仕上げていく美しき店主・陽子とは似ても似つきません。なぜこのふたりが夫婦だったのか謎は深まるばかりですが、自称・ルポライターの岡田康雄の登場によってにわかにロマンスの予感も高まっていきます。

ハッピーエンドからは程遠いすべてをぶち壊しにしてしまうほどの衝撃的なラストは必見で、ありきたりな小説には食傷気味の読書家におすすめです。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。電子書籍はありません。

他の電子書籍サイトでも「あらゆる場所に花束が……」の電子版は読むことができません。

honto では、紙の本を購入することができます。

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