「日の名残り」第2次世界大戦後、老執事が人生を振り返る物語

「日の名残り」がどのような作品なのか、読者による小説のあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「日の名残り」を読んだきっかけ

作者であるカズオイシグロが、ノーベル文学賞をとったことで名前を知り、有名な作品である『わたしを離さないで』を読破した後に、他の作品も読んでみたくなり、ブッカー賞を受賞した本作を選んだのがきっかけです。

「日の名残り」はどんな小説?

人生の夕暮れ時を迎えた老執事が、これまでの人生を振り返る物語。現実と過去が交錯する一人語りで物語が展開していくため、読者は主人公の過去を追体験していくが、語りの中に記憶の不確かさ、あるいは記憶の美化といったバイアスがかかっているのが面白い小説。

「日の名残り」」のあらすじ・ストーリー

時は第2次世界大戦後、スエズ戦争の直前。英国の名のある屋敷で長年勤めてきた老執事スティーブンスは、新しい主人であるアメリカ人のファラデーに休暇を与えられます。

スティーブンスは、その休暇を利用して元同僚を訪ね、あわよくば屋敷に戻ってきてもらうつもりで、旅行へと出発しました。英国の田園風景を横目に、スティーブンスの脳裏によぎるのは過去のお屋敷での日々。

アメリカ人のファラデーに買われる前の屋敷の主人は、英国の貴族であるダーリントン卿でした。卿が健在であった屋敷の日々は、スティーブンスにとって執事生活の黄金時代であり、旅の道筋でその軌跡を振り返っていくのです。思い出される誇らしい仕事や美しい思い出。しかし、人生初と言ってもいい旅行で、人々の生活や考えに触れた時、スティーブンスは本当に自分の人生が正しいものであったのか、考えざるを得なくなってしまいます。

その最たるものが、ダーリントン卿の晩年であり、卿の死後の評価は、ナチスドイツへの協力者となってしまっているのでした。スティーブンスは卿を立派な人物だと信じ切っていましたが、人々の卿への評価を聞いた時、自分が卿のナチスへの接近を黙認していたことを思い出すのです。

このようにスティーブンスは様々な過去を振り返り、その過去は都合の良いように美化されていて、取り返しのつかない選択を繰り返していたことにも気づくのです。旅の終着点は、以前屋敷で働いていて、恋仲になりかけたミス・ケントンの家でした。

スティーブンスはミス・ケントンの好意に気づいていたにもかかわらず、仕事を理由に拒絶してしまったのです。彼女はすでに結婚して新たな生活を送っていました。二人は再会を喜ぶと共に、切ない過去を振り返ります。しかし彼女がそれなりに幸せな結婚生活を送っていることを知り、スティーブンスは自分も現実と向き合い、新たな人生を送らねばならないと静かに決意するのです。

「日の名残り」を読んだ感想

人の記憶の不確かさをモチーフに、主人公の一人語りによって描くストーリーが非常に巧みな小説だと思います。主眼は一人の老執事の過去なのですが、自分の黄金時代を振り返る姿が、大英帝国と呼ばれたイギリスの姿と重なって見えるのです。

かつてイギリスは世界のトップに君臨し、国民もそれを誇りに思っていましたが、2つの大戦を経て、世界の覇権はアメリカへと移っていきます。落ち目のイギリスが、大英帝国という看板を失った時、いったい何が残るのか。

そんな国の姿が、イギリス人の主人から、アメリカ人の主人に変わってとまどう老執事のスティーブンスの姿と重なり合うのが、この作品の肝であり、面白いところだと思いました。

予備知識なしで読んだとしてもイギリスの風景描写や一人語りの魅力、人生の夕暮れ時という普遍的なテーマによって楽しく読める小説ですが、イギリスの19世紀から20世紀のイギリスの歴史を知ることで、より深くテーマを感じ取ることができる大人の小説だと思います。

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