「屍鬼」キャラクター視点で深く掘り下げながら物語が描かれるサスペンス・ホラー小説【あらすじ・感想】

「屍鬼」がどのような作品なのか、読者による小説のあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

読んだきっかけ

ネット上で小説を紹介している動画でこの本を知りました。作品に合わせた背景素材を使用し、本文やキャラクターの台詞で構成されている動画となっており、「ホラー作品である」「ただ怖いだけの作品ではなく、キャラクターの苦悩が描かれている」ことが分かり、興味を引かれました。

どんな小説?

「屍鬼」は、著者・小野不由美のサスペンス・ホラー小説です。日本のホラーらしいじっとりとした暗く静かな恐怖が描かれますが、お化け的な要素ではなく、人間同士のサスペンス的要素の方が強く感じられます。

登場人物が150人超えと多く、主人公視点だけではなく、それぞれのキャラクター視点でも深く掘り下げながら物語が描かれます。

あらすじ

人口1300人余りの外場村。三方を山に囲まれ、外部からは1本の国道のみで繋がっており、周囲から隔離された小さな村です。

土葬の習慣が未だ残っている村には、ひとつの言い伝えがありました。死人が墓から起き上がり『鬼』となり、村へ下りてきて祟りをなす、という物です。

そんな鬼や村の穢れを村の外まで連れてきて祀り捨てる「虫送り」という村の祭事の最中、深夜の午前三時近くに引っ越しのトラックが村の方向にやってきました。

そのトラックは村に入らず引き返したかに見えましたが、後日、夜闇に乗じてひとつの家族、桐敷家が越してきたところから、惨劇の物語は少しずつ静かに始まります。

その夏は猛暑に見舞われ、山中にある山入地区で3人の村人の死体が発見されました。村人たちからは事件性なしと判断されますが、村で唯一の医者・尾崎敏夫は不信感を持ち、幼馴染で寺院の息子・室井静信とともに調査を開始しました。

その後も村人たちが次々と謎の死をとげていきます。軽い風邪のような症状から始まり、だるさでぼうっと寝ている間に、容体が急変して死亡してしまいます。一人が死亡すると、その家族は次々と死亡していき、死が連鎖しているように見えます。

最初は伝染病かと思われましたが、死者だけではなく、突然夜逃げのようにして行方を眩ます人も増えていき、村は不気味な空気に包まれます。 実は村では言い伝えの通り、死者が『鬼』となり起き上がっていたのです。

村に越してきた桐敷家の娘・沙子は、死者から起き上がった自身を『屍鬼』と呼びます。屍鬼は人間の血を吸い、屍鬼の吸血によって死亡した人間の一部は『屍鬼』となって起き上がり、家族や村人たちを襲います。

沙子は土葬の習慣が残る外場村に目を付け、屍鬼の仲間を増やしていたのです。 忍び寄る死者の群れ。息を潜め、闇を窺う村人たち。それぞれの生死をかけ、血と炎に染められた凄惨な夜が始まります。

感想

初めて「屍鬼」を読んだ高校生のときには、人間側の味方である尾崎先生や、人間として死んでいった夏野という高校生の視点で物語を読んでいました。

しかし、二度目に読んだ時には、屍鬼となってしまったキャラクター、夏野の友人・徹や、看護師・律子の、自分が生きるためには人間を殺さなければならないことへ苦悩し必死に抗う姿勢に共感しました。

そして、大人になってから読み返した時、人間でありながら屍鬼の味方をした室井さんの考えが理解できるようになっていました。

屍鬼に襲われる村人の恐怖や怒り、屍鬼となってしまった人物たちの葛藤や優越感など、150人を超える多数のキャラクターそれぞれの、千差万別な想いや感情が描かれている物語です。読む度に、新しい視点での発見があり、数年おきに何度でも繰り返し読みたいと思える作品です。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。電子書籍はありません。

その他の電子書籍サイトでも「屍鬼」の電子版は読むことができません。

honto では、紙の本を購入することができます。

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