銀の匙(ぎんのさじ) 幼少期から少年までの思い出を描いた小説【あらすじ・感想】

「銀の匙」がどのような作品なのか、読者による小説のあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「銀の匙」を読んだきっかけ

高校生の時、「高校生が読んで感動するお勧めの本」らしい、と読書家の友人に教えてもらいました。おすすめの本が、おすすめであった試しがないと警戒した私でしたが、半信半疑で読んでみたら本当に名作でした。

「銀の匙」はどんな小説?

主人公の幼少期から旧制中学、十七歳頃までの話です。主人公の幼い目線そのままに、思い出が、美しく切なく、描かれています。夏目漱石も絶賛した小説で、本当に美しい日本語で書かれています。明治から大正にかけて書かれた自伝的小説です。

「 銀の匙」のあらすじ・ストーリー

作者の幼少期から十七歳頃までの思い出を断片的に書いたもので、これといった、あらすじやストーリーはありません。作者は、病弱な少年です。伯母さんに大事にされた思い出が多いです。伯母さんは、いい人です。旦那さんをコレラでなくしてしまった人です。話は、作者が引出しから、銀の匙を発見することから始まります。

そのスプーンは、病弱だった主人公が幼い日、漢方薬を飲むときに使ったものでした。それを見つけて、作者は、幼少期のことを思い出します。さまざまなエピソードが、断片的に連なっています。

一応、時系列に並んでいます。前編と後編に分かれています。時代は戦争の時代で、勇ましいことが尊ばれています。

しかし作者は、そういった風潮になじみません。病弱で泣き虫です。勉強はできると思っていたのですが、それも周囲が気をつかって、優しかったせいで、そう思っていたにすぎないと知ります。作者は、絵や歌が好きです。四条派の粉本を見ながら、ひとりで絵を練習します。兄は粗暴なタイプで、そういう主人公を馬鹿にします。

作者は女の子とあやとりをしたりして大人しく遊ぶのが好きで、感受性が強いです。家で蚕を飼っていたのですが、やがて、蚕が捨てられてしまいます。畑に捨てられているのを見て、作者は心を傷め、雨の日に、傘をさして蚕を守ります。ようやく伯母さんに諭されて家に帰りますが、作者の本当にくやししい悲しい気持ちが切なくなります。作者は、修身の時間が嫌いです。

教科書が粗悪であるだとか、そんなことにも嫌悪感を覚えます。また、教師の大雑把で適当な解釈や、作者の感受性を踏みにじるような扱いに腹をたてたりします。十七の頃は、美しい姉様に、ご機嫌ようと挨拶をされても、聞こえないふりをしてしまうような内気な青年になっています。

「銀の匙」を読んだ感想

マドレーヌの香りで思い出が蘇る、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』を彷彿とさせます。

プティット・マドレーヌの代わりに「銀の匙」が作者の記憶をよみがえらせるきっかけとなります。

文章はロマン派でもあり、日本の口語文学を確立させた夏目漱石に絶賛されるだけあって、本当に美しいです。平明でありながら、描写が繊細で的確です。いまだに色あせない名作です。守られ、大事にされていた子ども時代を懐かしく思い出すよすがとなるでしょう。

子ども時代に大事にされた思い出がない方も、子どものころは、大人たちが理不尽で、くやしい思いをした、などという箇所に共感できるでしょう。繊細な方たちは、いまでも、こういう、がさつな周囲や世の中に、辟易しているのだ、と作者の世界に共感できるでしょう。甘く切ない懐かしい気持ちになることうけあいです。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。

その他、「銀の匙」が読める電子書籍ストアはこちらです。

コミックシーモア  BOOK☆WALKER  ebookjapan  BookLive!  honto  ブックパス

タイトルとURLをコピーしました