イン ザ・ミソスープの感想 不気味で怖い登場人物フランクが描かれたサイコ・サスペンス小説

「イン ザ・ミソスープ」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「イン ザ・ミソスープ」を読んだきっかけ

もともと作者の村上龍のファンで、代表作、人気作を一通り読み終わった後に過去作を探していて、この作品に出会いました。タイトルの「イン・ザ・ミソスープ」に惹かれ、インパクトを感じたというのもあります。

どんな小説?

村上龍が手掛ける戦慄のサイコサスペンス・ホラー小説がこの「イン ザ・ミソスープ」です。登場人物の外国人男性フランクは、いわゆるシリアル・キラーで殺人を犯すことでしか自分の存在証明ができない人物。彼の不気味さや言動のグロテスクさは衝撃的ですが、それだけにとどまらない深い感動と、社会や時代について考えさせられる作品でもあります。

あらすじ

主人公のケンジは、外国人観光客相手に、日本の風俗店のガイドをする仕事をしています。ある日、アメリカ人の中年男性・フランクから依頼がありました。一見、人当たりの良い雰囲気のフランクでしたが、ケンジは彼に奇妙な違和感と、これまでに感じたことのないような胸騒ぎを覚えましたが、いつも通り仕事にあたります。

ケンジはこれまで多くの外国人男性と接していましたが、フランクはその男性たちとは全く違う、何か作り物のような、不思議で不気味な存在感を放っていたのです。 フランクと行動を共にし仕事をこなすうちに、ケンジの胸には、いつしか彼が数日前に話題になっていた猟奇殺人事件の犯人ではないのか、という疑惑が浮かびます。

その事件は、女子高生が無残にもバラバラ死体で発見されたという凄惨なものでした。何の根拠もないものの、なぜだかケンジの胸の内では、その事件の犯人とフランクがイコールで結ばれていくのです。

フランクの奇妙な言動と、何とも言えない薄気味悪いただずまいに、ケンジの胸の中の疑惑はやがて確信へと変わっていくのでした。ケンジには恋人がいて、彼女のことだけは何があってもフランクのような男からは守りたいと密かに決意を固めます。そんな中、訪れたクラブでついにフランクはその獰猛な本性を現し、店内の人間を相手に凶行に出ました。

店の従業員の女性たちも、その時居合わせた客たちも、次々にフランクの手に掛けられていきます。その事件の一部始終を目撃していたケンジ自身も、フランクの手に掛けられそうになりますが、彼は助かります。フランクがなぜこれまでこのような残忍な行いを続け、そしてなぜケンジを殺さなかったのか、全ては最後のフランクの長い独白で明らかになります。

読んだ感想

最初は、ケンジが感じたフランクへの気味悪さが明確に伝わってきて、彼がいかに化け物であるかということや、この作品の怖さ、グロテスクさに興味を奪われましたが、読み進める内に、現実にあり得そうな話だと強く感じました。

実際、この作品が執筆されている時期に「神戸児童連続殺傷事件」が起きたというのを作者あとがきで知り、読み終わった後にさらに恐怖を覚えました。 人を傷つけ、殺害することで自分と世界とのつながりを保っているフランクという存在に恐怖を覚えると共に、どこか得も言われぬ悲哀を感じてしまいます。

世間や自分を取り巻く環境との距離感や、自分という存在に対する絶望にも似たような感情を最後のフランクの独白で感じ取ることができ、この作品の持つ深い意味に圧倒されました。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。電子書籍はありません。

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honto では、紙の本を購入することができます。

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