「望み」親心のリアルに迫るミステリー小説【あらすじ・感想】

「望み」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「望み」を読んだきっかけ

雫井脩介著の「望み」を読もうと思ったのは、映画の評判が良いと聞いたからです。少年の非行事件を取り扱っていて、親の心情に深く迫るというストーリーに興味を惹かれました。

どんな小説?

「望み」は少年の起こした殺人事件の真相に迫る推理小説のようなストーリーでスリリングな小説です。しかしそれだけではなく、行方不明になった息子が加害者なのか被害者なのかわからない状態で、息子のことをどう考えるべきか悩む親の心情を描いた切ない物語でもあるといえるでしょう。

あらすじ

東京のとある街に居を構える石川家の長男、規士(ただし)は高校1年生。両親と中学生の妹・雅(みやび)と暮らしていました。高校に入る前からサッカーに熱中し、それなりの成績も治めていた規士はサッカー選手になることを夢見ていました。

しかし高校入学後の部活動中にケガをして引退。それからは生活が乱れ、素行の良くない友人と付き合ったり、時には外泊もするようになってしまっていたのです。

建築デザイナー事務所を自宅で営んでいる父一登(かずと)や校正者の母貴代美(きよみ)は息子のことを心配し注意しますが、はっきりと返事をしない息子が何を考えているのかわかりません。ある日息子がナイフを持っていることに気付いた父一登は、他人を傷つけるのではないかと心配してナイフを取り上げます。

しかし、ある日規士は外泊したまま帰ってこなくなったのでした。携帯も通じなくなってしまい心配する家族に、あるニュースが届きます。

それは規士と同世代の少年が殺された、というものでした。殺された少年が息子ではないことに家族はいったん安堵しますが、その少年が息子とつながりがあること、息子たちの周辺で行方不明になっている少年が何人かいて、もう一人殺された者がいるらしい、ということがわかってきます。

そのうち、ネットやニュースでの報道をもとに、息子を加害者と考える人々が家族に嫌がらせをするようになり、父親の仕事にも差支えが生じ始めます。その中で父親は息子が被害者なのではないか、と考えはじめます。

その一方で母親の方は、息子が加害者であってもかまわない、とにかく生きていてほしい、と願うようになるのでした。だんだんと事実が明らかになっていく中、家族の葛藤と切ない思いが交錯する物語です。

読んだ感想

少年の非行事件が起こると、親は何をしているんだ、とよく言われますが、そういう立場の親の心情がリアルに描かれていることに凄みを感じました。たとえ加害者であっても、帰ってきたら受け止めて更生するまで支えるのだ、と決意する母親の姿が痛々しくもけなげでした。

その一方で父親は息子を信じたい気持ちや仕事に支障が出るという現実的な心配もあって、息子は被害者で、すでに死んでいる、と考えたい思いがあります。それは自分のエゴでもありますが、息子が悪い奴ではないのだ、と信じたい気持ちもよくわかるように思いました。

そのような葛藤にこちらも巻き込まれ、ハラハラしながらあっという間に読み終わってしまいました。また、マスコミの動きや周囲の心ない対応が当事者をどんなに傷つけるかということについても改めて考えさせられました。

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