「天空の蜂」原子力発電所をテーマに描かれた小説

「天空の蜂」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「天空の蜂」を読んだきっかけ

2015年に映画化されるという話を聞いたとき、以前から東野圭吾ファンで気になっていたのに、まだ原作小説を読んでいなかったので読んでみようと思ったのがきっかけです。

どんな小説?

「天空の蜂」は東野圭吾原作の小説で、2015年には映画化もされた作品です。自衛隊のヘリを奪って原子力発電所に落とすという脅迫事件を扱う小説のためミステリーに属するとは思いますが、犯人はストーリーの半ばで判明するため、犯人捜しを楽しむよりも社会はミステリーのような感覚で楽しむ小説ではないかと思います。

あらすじ

自衛隊が民間企業と開発した無人大型ヘリが公開式典前に何者かに盗まれ、その遠隔操作可能という点を利用されて、犯人グループに盗まれてしまいます。

遠隔操作されたヘリは敦賀にある原子力発電所の上空で停止し、そこに「日本中の原子力発電所の稼働を停めなければ、原子力発電所にこのヘリを落とす。ヘリには爆発物が積んである」という要求と犯行声明が「天空の蜂」と名乗る犯人側から出されます。

しかし、その無人であるヘリの中には開発に携わっていた人間の子供が紛れ込んでおり、あくまでターゲットは原発のみで人的被害は望んでいない犯人側の予定にも狂いが生じます。

犯人側にはヘリを動かすという選択肢はなく、空中で別のヘリからその子供を助けるという作戦に踏み切る自衛隊が織りなす救出作戦の成否、政府は犯人の要求通りに国内すべての原子力発電所を停めるのかどうか、そしてヘリは最後はどうなって被害は出るのか出ないのかなど、次から次へとドキドキハラハラする展開が続きます。

物語の展開の途中で犯人たちが誰なのかは明らかにはなりますが、その犯人たちがそれぞれなぜこの犯行に及ぶに至ったかの動機や経緯、原子力発電所の安全性はどのような条件下で保たれていたのかにまで言及されていて、小説として作品のストーリーを楽しみつつも知識・教養も身について、原子力発電所の存在意義という社会問題についてまで考えさせられるような展開が続きます。

読後は犯人側がどのような結末になるかはある程度わかったうえでの犯行であること、また「原子力発電所は安全です」と国が言い続けていたことが、かえって犯人たちに殺人(あるいは殺人未遂)などの重い罪を課すことが難しくなるという点も見どころの一つだと思います。

読んだ感想

「天空の蜂」は原子力発電所をテーマに書かれた小説ですが、原子力発電所の問題が大きく取り上げられるきっかけとなった東日本大震災ではなく、そのもっと前である阪神大震災が起きた1995年に刊行された小説です。

原子力発電所という性質上、テーマ自体が重いものにはなりますが、東日本大震災ではなく阪神大震災が起きた頃にこのようなテーマで小説を書かれた東野圭吾さんに対して、小説でありながら社会への問題提起にもなっているところに凄みを感じました。

小説という分野である以上は原子力発電所が良いとか悪いとかを論じるのではなく、物語の展開にドキドキさせられながら、読者に原子力発電所の存在意義を考えさせるようなきっかけにもつながるような作品だと思います。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。電子書籍はありません。

その他の電子書籍サイトでも「天空の蜂」は読むことができません。

honto では、紙の本を購入することができます。

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