「そして、バトンは渡された」家族の形、家族愛を考えさせられる小説

「そして、バトンは渡された」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「そして、バトンは渡された」を読んだきっかけ

2019年本屋大賞作品だったので、ずっと読んでみたいと思っていました。本屋でも単行本がたくさん積まれているのを何度も目にしていたし、「次に結婚するとしたら、いじわるな人としてくれないかな」という、とても印象的なセリフが店内で流れていたりもして、どんな作品なんだろう、と思っていました。文庫本として出版されてすぐ買いました。

どんな小説?

描かれるのは一貫して家族愛なのですが、その家族の形がとても特殊で、しかもコロコロと姿を変えていきます。

主人公の優子の親として描かれる人物は5人、これだけを見ると複雑な事情のある育児放棄や家庭崩壊が思い浮かびますが、本作はそのような言葉とは対極にあり、5人の親は、全員優子のことをしっかりと愛しています。

血の繋がりを超えて、新たに家族という関係を築いていく親たちの優しさやそれぞれの愛情が、家族というものの形を考えさせてくれる作品です。

あらすじ

17歳の優子は、のびのびと自由に、ほがらかに日々を過ごしています。だけど、担任の先生との面談で言われるのは「つらいことは話さないと伝わらないわよ」という特別な悩みを持つ生徒に掛けられる言葉ばかりです。

大人たちは、家族の形が7回も変わった高校生に「不幸な子供」という認識を持ち、どうにかその悩みを解決してあげなければ、という使命感を持って優子に接します。だけど、実際、優子は大人たちが想像するような不幸を背負ってなんかいないのです。だから優子は、今の父親である森宮さんに言います。

「森宮さん、次に結婚するとしたら、いじわるな人としてくれないかな」、そんな優子のぎょっとする発言に森宮さんはどうして?と言いながら器用に食卓を整え、結局不幸になるのは諦めて、ちょっと変わった家族は今日も平穏に幸せに暮らしているのです。

学校での人間関係における悩み、合唱コンクールでのピアノ伴奏、大学受験、などなど成長過程にある優子を取り巻く様々な問題に、森宮さんはとても愛情深く、でもどこかおかしな方法でアプローチしていきます。

始業式の朝からカツ丼を用意したり(重すぎる)、にんにくたっぷりの餃子をつくったり(次の日も学校なのに)、受験勉強のために毎晩夜食を持ってきたり(おなかすいてないのに)、優子が伴奏する合唱コンクールの曲を自分も歌えるように練習したり(父親として当然だと思ったらしい)、そんなちょっと変わった方法をとる森宮さんの型破りな愛情表現に支えられながら、優子もひとつひとつを乗り越え、大人になっていきます。

7回変わった家族の形、その中にはもちろん実の親もいるし、可愛らしいのに破天荒な梨花さん、ほとんど会話はなくとも静かな愛情がある泉が丘さん、そして自由であっけらかんとしている森宮さん、という個性的な親たちが登場します。それぞれと過ごす時間、どの家族にも優子はちゃんと愛され、優子というバトンが次の親に渡される瞬間も、それは親たちの勝手な都合ではなく、愛ゆえの決断です。そんな面白くてあったかい物語の最後に、森宮さんはそのバトンを、光の満ち溢れる大きな未来へと渡すことになります。

読んだ感想

血の繋がりという確固としたものがあっても、愛が途絶えないわけではありません。むしろその切っても切り離せない関係によって頭を抱える人も多いでしょう。

ああ、人間が生きていくために一番必要なのは、血が繋がっているとか、戸籍がどうとか、関係性の名前とか、そういうものではないんじゃないか、と読み進めているうちに、はっとします。お互いの言葉を交わし、問題や困難を一緒に乗り越え、おいしいごはんを食べながら日常を生きていく、それだけで血の繋がりなんかなくても人は家族になれるのです。

なんて希望的なのでしょう。でも現実を見るとそんなに綺麗にはいかないだろうし、世の中が瀬尾まいこの描く世界のようだったらどんなに素敵だろうか、とため息をつきたくもなったりします。だけど、こんなに素敵な世界が、あったかくてほっとする愛情深い世界が、どこかにあったらいいな、と願う気持ちを、本作はバトンのように読者に渡してくれるのです。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。

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