「ワン・モア」(桜木紫乃)二人の女医が主人公の小説【あらすじ・感想】

「ワン・モア」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「ワン・モア」を読んだきっかけ

桜木紫乃さんが「ホテルローヤル」で直木賞を取った時に、テレビでインタビューの映像を見て「面白そうな人だな。どんな作品を書くのかな」と思い、受賞作を読んでドはまりし、買い漁った中の一つです。

どんな小説?

美和と鈴音という二人の女医が主人公の小説です。余命宣告をされた鈴音と、鈴音が経営する病院を任された美和、この二人を取り巻く看護師、鈴音の元夫、美和の恋人、近所の本屋の店長さんなど、心に何かを抱えて、それでも前を向いて「ワン・モア」と生きていく温かい人間模様が描かれています。

あらすじ

舞台は北海道の道東。安楽死事件の責任を取って離島に飛ばされた内科医の美和。島の漁師の昴と大人の関係を築きます。しかし昴は既婚者。小さな島では隠すことはできず、美和の立場は良くありません。

そこへ親友の鈴音からの電話。大腸がんで長くない、経営している病院をお願いされ、島を離れる決断をします。昴との関係はこの後大きな事件へ。一方の美和は離婚した元夫拓郎にまだ心残りがあり、余命宣告を受けたことにより、自分の本当の気持ちに動揺します。「拓郎にいて欲しい、でも余命が短い自分はその一言を言ってはいけない」葛藤に苦しむ美和。

30代女性の若さで命の期限を突き付けられた、恋しい人へのあふれる思い、拓郎はどう受け止めるのか。美和の病院の看護師の裏田寿美子は鈴音と美和の二人にとって大事な登場人物です。彼女の看護師としても人としても温かく寛容な人柄は主人公二人にとっても心強い味方ですが、そんな彼女にも恋のハプニングが起こります。

大きな病院で看護師をしていた時に担当した、胃がんで入院していた消防士の赤沢からの連絡。5年前の退院の時に「胃がんに勝って5年たったら会いに来きます」の宣言通り、食事のお誘いの手紙をもらいます。

アラフィフで独身の寿美子、若いときは悲しい恋も経験し、浮かれることなんてありえないと思ってたのに乙女のようにときめきます。その他病院近くの本屋の店長佐藤と元定員の詩織、鈴音の元夫拓郎、美和と鈴音の同級生で放射線技師の八木、二人を中心に渦となって一つになり、物語は進みます。女性同志の友情、命の切なさ、いとおしい人への思い、その先の未来に何があるのか、何を残して、何を受け継いで、どんな風に受け止めるのか、読後感は心いっぱいに幸せになります。

読んだ感想

柔らかい作品です。それまでの桜木紫乃さんの作品は悲しかったり衝撃だったり、苦しいさといとおしさのバランスがギリギリを追及してたような気がします。

この作品以降はギリギリの作品と温かい作品を分けているような、悲しみを抱えて前を向いて歩く人を包みこむ文章が増えてきたような気がします。女性同士の友情はうそっぽくなりますが、この作品は本物に感じました。

美和と鈴音の関係が良い、特に美和のスタンスが桜木さん自身では?と思わせました。一番好きなお話は看護師の浦田さんの恋。私自身が年が浦田さんと近いので、何だか私も恋をしたいなぁ~と考えてしまいました。いくつになっても恋って素敵なんですよ、自分じゃない他人を受け入れる行為。それが恋。タイトル通り前向きで素敵な作品でした

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