江戸川乱歩の傑作「人間椅子」エロティックで怖い話に引き込まれる作品

「人間椅子」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「人間椅子」を読んだきっかけ

青空文庫でのオススメ作品だったからです。著作権が切れた作品をネット上で無料公開している青空文庫でトップクラスの人気を誇っていた「人間椅子」。江戸川乱歩の作品を読んだことがなかったこともあり、はじめて乱歩作品にチャレンジしてみました。

どんな小説?

人間椅子は、ジャンルとしてはホラー小説やスリラー小説に分類できます。椅子の中に潜みそこに座る女を待ち続ける男の物語、どう見てもストーカーか変質者。客観的に見れば異常な狂気に震えます。

一方、男の視点から語られるので官能的なフェティシズム小説としての一面も。怖いけどエロい、そしてラストの驚き。大正時代の作品とは思えない完成度、エンタメ小説のお手本と言っても過言ではありません。

あらすじ

外交官を夫に持つセレブ女性作家佳子。彼女の元に1通の手紙が届きます。それは、一人の男からの罪の告白でした…。家具職人の男(「私」)は、仕事の腕は確かなものの生まれつきの醜い容姿に悩まされ、女性とは全く縁がない人生を送ってきました。

ある日、外国人専門の高級なホテルに納品する大型の安楽椅子の製作を託されます。私は椅子の中に人一人分の空洞を作るとその中に潜り込み、ホテルへ潜入。夜な夜な椅子を抜け出しては備品や食料品を盗難するようになっていきます。日中、私が椅子の中で息を潜めていると、何も知らぬ少女が椅子の上に腰掛けました。その時、私の中で何かが起こったのです。

容姿から差別され女性に触れることすら叶わなかった人生。夢にまで見た女が椅子越しに自分に身を委ねてくる感覚は、理性や常識をぶち壊すには決定的な出来事でした。女たちの柔らかくも重量感豊かな尻、艶かしくうごめく太もも、首の後ろから漂う甘い香り。女たちの身体に夢中になった私は、毎日のように官能的な経験に酔いしれていきます。

一方、私は言語が通じない外国人女性に対し物足りなさを感じはじめ、日本人女性とのむつみ合うことを望むようになります。その後、椅子はホテルから払い下げられることになり、私が中に入ったまま引き取られることに。椅子の買い取りに現れたのは妙齢の美しく気品漂う日本人の女性でした。

一日の多くを椅子の上で過ごす婦人に恋心を抱いた私。彼女を感じるだけでは飽きたらなくなり、遂に直接熱烈な思いを伝えるためにしました。手紙を読み終え、戦慄し椅子から飛び上がる婦人。その時、女中が私からの追伸を届けるのでした。その内容とは…

読んだ感想

15分程度で読める短編ながらその密度は大作に匹敵します。人間椅子からインスパイアを受けた作家は数知れず、何度も映像化や舞台化されたのも納得ですね。

巨匠・江戸川乱歩の筆力が凄い。私が女性の身体の感触を感じ取る描写のエロチックさは絶品です。男の行為は異常ですが、細かな描写力が抜群なので物語に引き込まれてしまいます。乱歩の筆力はホラー方面でももちろん発揮されていきます。

日常に狂気が潜んでいるという展開はスティーブン・キング的でもありますね。むしろ、時代的には乱歩がキングに先んじているのですけどね。私が次第に佳子に迫っていくところは鳥肌もの。夜に一人で人間椅子を読んでいると、ベットや椅子から飛びのく破目になりますよ。ホラー、スリラー好きには絶対おすすめです。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。

江戸川乱歩の小説「人間椅子」と、ホノジロトヲジのイラストのコラボレーション作品もあります。小説としても画集としても楽しめる一冊です。

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