「真珠婦人」美貌で男を弄ぶ貴婦人【あらすじ・感想】

「真珠婦人」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「真珠婦人」を読んだきっかけ

ドラマ、花子とアンがブームになり昔興味を持っていた柳原白蓮の琴を再度知りたくなりました。そんな中、彼女をモチーフにしたと言われる菊池寛の作品・真珠婦人の存在を知りました。

どんな小説?

著者・菊池寛の作品の中でも通俗小説と言われる真珠婦人。それでも彼の文章は美しく、読み始めたら最後まで読者の心をとらえて放しません。まるで映画を観ているかの様に主人公の容姿や情景を思い浮かべることができます。

時代風景も面白いですが凛とした主人公の言葉遣いや立ち振る舞いは現代女性にも知って欲しい位にエレガンス。内容もとても活動的で面白いですが、女性の生き方も実に魅力的に描かれています。

あらすじ

主人公の瑠璃子は士族で精錬潔白な尊敬すべき父と慎ましく暮らしていた。恋人と出かけた園遊会でついつい漏らした悪趣味な成金主義の園遊会についての感想を主催者の未来の夫に聞かれてしまう。

夫荘田は口惜しさと自分にはない気高い瑠璃子を手に入れたくなったのだ。荘田は瑠璃子を手に入れる為に策略を練り、彼女の父を陥れついに彼女と結婚することができたのだ。恋人と別れ彼女は自暴自棄になってしまう。荘田には体を許すどころか心も許さなかった。非業の死を遂げた夫が居なくなったことで彼女の自暴自棄な立ち振る舞いに拍車がかかるのだった。

次々に男性を手玉に取り弄んだ。手玉に取った中の一人の青年の葬儀で彼女はある男に出会う。その男は青年の死の直前に偶然にも車に乗り合わせた男だったのだ。男は青年の日記から彼女に幻惑され失望し青年が自殺に至ったことを感じ、そして彼を自殺に陥れた彼女に真相を聞きたかったのだ。

偶然の悪戯で青年の弟も彼女に出会い惹かれてしまうのだ。後日それを知った男はそれを阻止しようとするが、それは不可能だった。且つ、自殺の真相を暴こうとした彼女の媚態と気高さに男は振り回され憔悴し、彼女の前から消えていったのだ。彼女には愛すべき義理の娘がいた。憎んでいた荘田の実の娘だった。義理の娘は自分が自殺に追いやった青年の弟、

しかも彼女に恋をしている彼のことを好きになってしまうのだ。いつも通りに彼女に夢中になる青年を諫めながら、どうにかして逃げて義理の娘の恋を応援しようとするのだが、若い青年の情熱を止めることは出来なかった。

彼女は思い切って断ると青年は逆上し彼女を刺してしまうのだった。薄れ行く記憶の中で彼女は純粋だった自分が愛したただ一人の男が自分の枕元に寄り添う姿を目にする。それまでの自分の自暴自棄な行いを改めて悔いたのだった。自分が居なくなることで将来が心配な娘を彼に託し彼女は天国へと旅立っていく。

読んだ感想

主人公瑠璃子が悪趣味成金の夫荘田の策略によって復讐を父に誓うシーンは実に力強く美しかったです。

荘田の卑しい思考や醜い姿も実によく描かれていました。瑠璃子が彼を痛めつける姿ま正に痛快そのもの。読んでいて気持ちが良かったですし、彼が彼女を戸籍上は手に入れることが出来ても、本質的な結婚が出来ないまま死を遂げた時は胸を撫でおろしました。

彼女の男性を手玉にとる様子は残酷ではなく、寧ろ美しいとさえ感じました。瑠璃子を追い込もうとする日記を拾った男を言葉や美しさでねじ伏せてしまう様子も同性ながら思わずうっとりしてしまいました。

彼女が自分が交際を断ったことで逆上した青年から刺され死にゆく様はまるでカルメンを彷彿させる様でもありした。読み終えてなお、再読したくなる様な作品です。

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