「あなたの人生、逆転させます」新米療法士のメンタルクリニック日誌【あらすじ・感想】

「あなたの人生、逆転させます」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「あなたの人生、逆転させます」を読んだきっかけ

本作品の著者の小笠原慧さんは、「手のひらの蝶」「サバイバー・ミッション」などを書かれ、「DZ」では横溝正史ミステリー大賞を受賞しています。精神科医としては本名の岡田尊司として多数の著作を出版しています。

そのため本作も、主人公は大学院を出たばかりの臨床心理士が主人公となっていますが、内容に関しては深いものとなっています。

どんな小説?あらすじ

本作の主人公の美夢(みゆ)は、大学院の臨床心理の修士課程修了後の就職先を探していても、比較的新しく設立された臨床心理士育成コースのある大学院にいるため、人脈の無さから、なかなか心理士としての仕事が見つかりません。そうしているうちに偶然、新しく開業する小さなメンタルクリニックで心理士の一人として採用されます。

主に任されるのは各種の心理検査や医師の診察の前の予診ですが、そこを開業した精神科医の奥田医師は患者さんと対面しながらじっくり診察をしたいということで、美夢は診察の記録係として同席することになります。

開業してから最初に美夢が関わったのは、記憶が欠けていて、気が付くと自殺の名所の東尋坊にいたという会社員ですが、借金問題などが背景にあるため、なかなか解決しそうではありません。

次に関わったのは、中学生の息子が授業をさぼったりして遊んでいるという母親からの相談でした。その母親によると、小学生の時に発達の偏りがあるとのことで、治療を受けていたので、今回もそのためだろうとのことですが、関わっているうちに問題が起きる少し前に離婚したことなどを話すので、発達の問題だけでは無いことが解ってきます。

さらに母親も自分の母親と距離が取れず、それが元夫や子供などとの間の様々な問題にも影響していることが判明してきます。

3例目は大学生の女性の相談でしたが、潔癖症なため、何回も手を洗ったりすることがやめられず、生活上困っているという内容でした。そこまでは何かとよくある思春期の問題に近いように見えたため、奥田医師も認知の歪みを修正する取り組みを始めますが、徐々に離婚して離れて暮らす父親の事が大きな原因の一つとして浮かび上がります。

そうしているうちに父親が自ら奥田医師の診察に訪れ、意外な展開になります。何かと小説などでは、特定の原因が解ってくると、そこから解決に至るという展開が多いですが、本作の後半はそう上手くはいかないことが取り上げられてきます。

4例目は依存症の事になりますが、それに関しても、本人の成育歴の事が解ってくると、本人が依存症を何とかすることと、自分の子供に同じような問題を繋いでいかないことが重なってきます。

読んだ感想

どの例も、現在の社会の問題と繋がっており、何か特定の原因を突き止めて解決したり、何らかの薬などで解決できないことが出てきます。
作者は精神科医として、医療少年院に勤務していたため、複雑な家庭や恵まれない成育歴が、自分の担当する少年たちに大きな影響を与えていることが解ったのでしょう。

そしてそれが少年院に収容された少年たちだけではなく、普通のメンタルクリニックなどに来る人にもよく起きていることで、特定の原因を見つけて解決したり、何かの薬で表面的な症状を取ることでは解決しないことを本書で描きたかったのでしょう。そのため新人の臨床心理士の美夢を物語の中心として描き、解りやすくしたようです。

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