「告白」湊かなえデビュー作で本屋大賞。罪深く、悲しく、儚い小説【あらすじ・感想】

「告白」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「告白」を読んだきっかけ

子育ても落ち着いたので、心を大きく動かされるような何かをしようと思った私。

「それなら読書かな」と思った時、ちょうど新聞の広告欄で、湊かなえ のデビュー作にして本屋大賞に輝いた「告白」を知ったのですが、その内容が少年犯罪、被害者は自分の愛娘だと知り興味を持ちました。

どんな小説?

最愛の娘の死が、実は事故によるものではなく自分のクラスの生徒による殺人だと知った悠子。

それを悠子が年度末の終業式後のホームルームで生徒達に暴露するシーンから始まるこの小説は、悠子と犯人の少年を含む主要な人物6人の心理、背景を浮き彫りにしながら、聖職者と言われる教師であり最愛の娘を殺された母親である悠子の復讐を描きます。

あらすじ

シングルマザーの悠子は中学校で1年の担任を務める教師ですが、4才の娘の保育所のお迎えなどを頼んでいた女性が入院する事になり、退院までの3か月間、放課後の学校に娘を連れて来ることにします。

しかし、その娘がプールで溺死体で発見されます。事故だと思われた娘の死は、実は自分のクラスの生徒による殺人だった事に悠子は気付きますが、警察に通報しても犯人は少年法に守られるだけ。悠子は警察には通報せず、自らの手で復讐する事を選びます。

最初の復讐で、娘を死に至らしめた直樹は不登校となり、徐々に精神を崩壊させていきます。特にとりえもない自分を分かっていて、そのくせプライドが高く、他人の評価ばかりを気にする少年です。

もう1人、直接、娘を手にかけたわけではないけれど主犯格の修哉は、科学者の母親仕込みの知識を駆使して科学工作や爆弾までをも作る事ができる成績が学年トップの少年。彼は悠子の最初の復讐にもクラスメートが醸し出す空気にも動じず、それまでと変わらない学校生活を送ります。彼は既に人間の感情を失っているように見えます。

現実に思春期くらいの少年少女や10代の若者による残虐な犯罪の報道にふれる時、彼ら、彼女らの家庭環境や生い立ちの影響を考える人は多いと思いますが、各章では各登場人物の心の闇と、それを生んだ原因を思わせる家庭環境や生い立ちがあかされ、それによって小説全体のストーリーが進行します。

そして迎えるラストシーンは、悠子と修哉の直接対決です。約4か月前、同じく教師であり、愛し合っていながら病気を理由に悠子との結婚を諦めた愛娘の父親が悠子に遺した、「復讐などやめて彼の更生を信じてほしい。それがきみの再生にもなるはず」という言葉。果たして悠子が修哉に与えた、更生の第一歩とは?

読んだ感想

聖職者、殉教者、慈愛者、求道者、信奉者、伝道者と銘打った各章では、1つの章で1人の登場人物が主人公となってストーリーが展開し、その重なりで事件の全貌が明らかになりますが、私はこんな成り立ちの小説に初めて出会いましたし、加えてタイトルが「告白」。

不思議なからくりを見せられたようで、まず構成面で、湊かなえマジックに敬服のため息が漏れました。

内容面では、湊かなえさんの繊細かつ鋭い心理描写は、的確に表す言葉が見つからずにいた私自身の感情をも明白にしてくれ、充足感が感じられると同時に、少年達の章では(少年達は残虐な殺人鬼なのですが)子供とはなんといじらしいのかと、涙が溢れて仕方ありませんでした。

この登場人物達の中で最も壊れているのは誰なのか?最も罪深いのは誰なのか?悠子とは何なのか?そんな事を考えてしまう余韻が残ります。「告白」、それは罪深く、悲しく、儚い、何度読んでも愛おしい作品です。

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