「まるまるの毬」江戸の菓子屋を舞台に、家族の在り方や人々の心の温かさを描いた作品

「まるまるの毬」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「まるまるの毬」を読んだきっかけ

海外在住のため、定期的に日本の小説をオンラインでチェックして購入しています。私は食べることが好きで食に関する小説に興味があり、またほっこりしたい時に読めそうだと思い、和菓子に関する物語且つ人情味あふれる時代小説ということでこの小説を購入しました。

どんな小説?

江戸の麹町にある菓子屋の南星屋を舞台に、家族の在り方や人々の心の温かさを描いた作品です。主人公である菓子屋の主の治兵衛を取り巻く家族や人々との交流を通して、家族とは何かということを問いかけています。

また、小説の章のタイトルがそれぞれ和菓子の名前になっており、美味しそうな和菓子と共に登場人物の思い出やその菓子に込められた想いを知ることができます。

あらすじ

南星屋の主である治兵衛は、娘のお永と孫のお君と共に江戸の麹町で菓子屋を営んでいます。若い頃に旅をしながら和菓子作りの修行に励んだ治兵衛の腕は確かなもので、諸国の珍しい菓子を日替わりで出すために店はいつも繁盛しています。

そんな治兵衛には人に言えない秘密があり、お永やお君にも知らされていません。お永は夫の浮気が原因で南星屋に出戻っていますが、その夫には複雑な想いを抱いているようです。年頃のお君はそんな母お永の姿に困惑しますが、お君自身も平戸藩の武士である河路金吾との縁談に悩みます。

また、治兵衛の弟である偉い坊様の石海や治兵衛の甥、柑子屋という菓子屋の主である為右衛門なども登場し、治兵衛の秘密に関わっていきます。物語が進むにつれ、治兵衛が実は武家の生まれで、それも単なる武家ではないということが判明します。そのことが南星屋を揺るがし、南星屋を目の敵にする為右衛門が不穏な動きを見せ、お君の縁談にも影響を与えてしまいます。

治兵衛は自責の念に駆られるのですが、お永、お君、石海に支えられ、家族の絆や愛を再確認して立ち直り、最後には治兵衛自身が一から思案した店の名物菓子をこしらえて物語は終わります。

治兵衛がどんな武家の生まれなのかということは物語を読んでいただくとして、それと並行してお永の微妙な妻の心やお君の年頃の娘らしい悩み、石海の治兵衛を思う気持ちなど他の登場人物の心情も丁寧に描かれています。

この作品の軸となる家族の真の在り方がそれぞれの登場人物を通して描かれており、治兵衛自身もそれを改めて気づかされるのです。そして、誠実な人柄の治兵衛が作る和菓子が家族というテーマや人々の交流に重要な役割を果たしています。

読んだ感想

まずは南星屋を営む親子三代の絆と、日々を大事に過ごして商売をする様子に心が打たれました。治兵衛が毎日心を込めて和菓子を作り、店先に立つお永とお君が治兵衛の心を継いで店や客を大切にしている様子にほっこりします。

治兵衛同様、お永やお君もそれぞれが抱える事情に悩むのですが、それを打ち明けることで家族の絆が深まり、互いを思いやる様子に心が温まりました。また、登場する和菓子の描写が何とも美味しそうで、由来や作り方も興味深く、その場で味わっているかのようでした。

食べることが好きな者としては、こういう描写はたまりません。個人的には、治兵衛と弟の石海の子供の頃の回想シーンで出てくる大鶉という菓子と、南星屋オリジナルの菓子である南天月が食べたいと思いました。

時代ものの小説ですが、語り口が絶妙でちょうどよいのでスイスイと読むことができ、読み終わった時には和菓子に合うお茶を飲んだ後のようにホッとする気持ちになりました。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。

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