「蝉かえる」主人公・魞沢泉が持つ虫に関する深い知識がヒントになり謎が解明されていくミステリー

「蝉かえる」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「蝉かえる」を読んだきっかけ

この本は「サーチライトと誘蛾灯」という作品の主人公が引き続き登場する続編にあたる作品です。櫻井智也氏のデビュー作でもあるこの連作短編集がとても気に入ったので、続編が出たと聞きすぐに購入しました。

どんな小説?

蝉かえるは虫に詳しい青年、魞沢泉(えりさわせん)が主人公のミステリー小説です。

彼の持つ虫に関する深い知識がときにヒントになり、謎が解明されていきます。短編集ですがひとつひとつの書き込み、情報量が深く、文章もとても整っていて、謎解きだけでなく人間関係の妙なども味わえる小説です。

あらすじ

かつて災害ボランティアとして訪れた土地を再訪した男が思い返す、当時に遭遇した少女の謎。彼女は霊だったのか、それとも?…土着的な信仰や風習を交えながら、十数年の謎が鮮やかに翻る表題作「蝉かえる」では、オカルト的な要素がくるりとひっくり返るロジックの巧さと、現代を舞台としながらもなお残る信仰の姿を説得力もって描く作品です。

最終盤のとある登場人物がさらりと行う行動が印象的かつ神秘的で深い印象を残します。

この他、団地での不可解な殺人事件をロジカルに解きつつ、母娘の複雑な愛憎を描いた「コマチグモ」、消えたライターの謎を追ううちに明らかになる意外な事実が鮮やかな「ホタル計画」、かつて事件を介して縁のあった山を再訪した主人公が遭遇する事件の顛末から彼の悲哀を描いた「彼方の甲虫」、等、それぞれが綿密な設定と人物描写で惹かせる連作短編集です。

いずれの短編でも殺人事件や複雑な心象風景を描く重さも含みながら、そつのない文章と軽やかな展開でしっかりと読ませます。一作目ではかなり謎の人物感も強かった探偵役の年齢不詳気味の青年、魞沢泉のキャラクタも今作ではしっかりと立っています。

彼の一見頼りなげな風貌といきなり繰り出す虫の豆知識の面白さもさることながら、話を通じて引き立ってくる彼の持つ複雑な境遇や佇まいが魅力的で、愛すべき人物として立体感を確かに感じさせます。

話のそれぞれに虫がアクセントまたはヒントとして登場しますが、描いているのは人の複雑な感情、育まれてきた信仰、といった血の通ったもので、それゆえに読後感もしっかりとした重みがあります。読み応えのある謎解きだけでなく、人間を描いた物語を楽しみたい人におすすめの小説です。

読んだ感想

昆虫好きの主人公、という設定ではあるものの、昆虫の豆知識をひけらかしてそれに驚くだけの小説ではありません。あくまで昆虫のさまざまな生態が関わってくるのは小説の要素の一つにすぎず、読み込ませるのは人物描写や設定の巧さ、そして謎の構成と意外な真実というミステリ的な面白さが確実だからです。

そして文章もデビュー二作目ながら丁寧かつ読みやすく、まったく引っかかるところもありません。とても完成度が高くて、今後の作品も楽しみになります。

そして一作目ではなかなか謎の人物でもあった主人公についても掘り下げた描写があり、より魅力的になっているところも良かったです。良い意味で人間くささがあり、体温が通っているようになりました。昆虫好きではあるものの、とても人に対してやさしく、それ故にときに傷つきながら事件を追っている姿がとても魅力的でした。

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