1973年のピンボール【あらすじ・感想】

「1973年のピンボール」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「1973年のピンボール」を読んだきっかけ

単純に村上春樹さんの作品が好きで、次々と読んでいくうちにこの作品に出会いました。

ピンボールは分かるけれど、なぜそれが1973年なのか、タイトルからは分からない部分が読書意欲を掻き立てましたし、個人的に春樹作品の初期のものは当たりが多いので、面白いだろうな、という確信のようなものがありました。

183ページという本の厚さも、その時の気分と合っていましたし、村上春樹特有の世界に浸りたくて、この本を読む事にしました。

どんな小説?

ピンボールについて話が断片的に登場する中で、翻訳の仕事をする主人公と友人の鼠という男の話、ジェイというバーテンダーと、双子の女の子、これらを回転軸としながら、何でもない日常が、独自の視点で描かれていく小説です。

読んで得る物があるかは分からないけれど、読んでいる間はいい気分になれるし、読んだ後もいい気分になれるから、良い読書体験を得る事ができる、という事もできるかもしれません。

あらすじ

※ネタバレあり

犬が端から端まで歩いているような寂れた駅のある町を故郷とする女の子の話を聞いていた主人公の僕は、端から端まで歩いている犬に会うためにその駅を訪れた。

そんな出来事から始まるこの小説は、様々な物語が断片的に語られる形式をとっています。 仕事の翻訳の話、友人の鼠の話、ジェイズバーでの出来事、ピンボールをめぐる話、ある日目が覚めたら隣に双子の女の子が眠っていたという話。

双子の女の子には名前がなく、双子であるがゆえに見分けがつきにくく、どちらがどちらか分からない。それだけでも困った話なのですが、そんな女の子が部屋に住み着き、主人公と共同生活を送る事になります。

変わった事が当たり前のように平然と描かれており、物語はそのまま続いていきます。主人公は、仕事で友人と翻訳会社を経営しており、小さい会社ながら翻訳の仕事で食べています。

昼間は仕事で翻訳をして、家に帰ると双子が待っている。そんなどこか奇妙でありながら、どこか魅力のある話が繰り広げられていきます。 主人公は、ピンボールが好きです。行きつけのジェイズバーにあったピンボール台で、遊ぶことが好きだった。

しかし、そのピンボール台が無くなってしまいます。彼は、その台を探すために八方手をつくし、やがてその台を見つけます。 そこでは、ピンボール台と主人公の対話が過去の思い出と共に繰り広げられていきます。

しかし、主人公はピンボール台と別れ、元の生活に戻らなくてはなりません。 自分の中で一定の大きさを占めていたものが過ぎ去り、様々な人と出会い、分かれる。

友人の鼠は町を出る事になり、突然同居する事になった名前のない双子は、ある日突然部屋を出ていく事になります。彼女らにも帰る場所があり、主人公は、双子に別れを告げます。

そこで小説は終わります。 友人が去り、同居していた双子が去り、それでも主人公の人生は続いていく。 話自体は大した事のないあらすじですが、それを読ませるように描いた世界観と言葉使いの秀逸さには、確かな面白さがありました。

読んだ感想

どれも、ひとりの平凡な男である主人公を中心として描かれる何でもない話なのですが、それが非凡に描かれている点が、この小説の優れたポイントだと思います。

電気屋が配電盤の交換に来た時に置いていった配電盤を、双子の女の子達がブランドのバックみたいに大切に取り扱う場面は、なぜそうなるのか不思議であると共に何らかの魅力があります。

配電盤の元気がなくなってきたら配電盤を貯水池に捨てる葬式を行い、カントを引用した祈りの言葉を捧げて供養する。 電気屋が置き忘れていった配電盤から、これだけの魅力的な物語が生まれるのは、この小説の中にある特有の魅力です。

村上春樹さんが作り出した世界観は、私の知る限り、他のどの作家の小説の中にも見出せないものであり、春樹さん独自の物であり、それゆえ、この小説を特別なものにしていると思います。

浮遊感のある特有の世界観を味わいたいのであれば、一読の価値のある優れた小説だと思いました。

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