「猫と庄造と二人のおんな」飼い猫「リリー」と一緒に過ごす時間を大切にする主人公・石井庄造【あらすじ・感想】

「猫と庄造と二人のおんな」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「猫と庄造と二人のおんな」を読んだきっかけ

谷崎潤一郎と言えば生前は日本人初のノーベル文学賞受賞者となるかと騒がれていましたが、自宅に10匹以上の猫を飼っていたというエピソードも聞いたことがあります。

国内外から高い評価と尊敬を浴びる文豪が、原稿執筆の合間にペットと戯れている様子を想像してみたくなりこの本を読んでみました。

どんな小説?

主人公は石井庄造という荒物屋の店主、家庭よりも飼い猫「リリー」と一緒に過ごす時間の方が大切だという変わり者です。

庄造とは離婚したばかりの品子、現在の妻である福子。ふたりの女性の思惑と嫉妬が絡んでくることによって、予想外の事態が巻き起こっていきます。

あらすじ

義理の母親・石井おりんによって嫁ぎ先を追い出されることになった品子は、夫の庄造に猫を連れていきたいと申し出ます。

名前はリリーでメス、欧米種のベッコウ猫、丸く大きな青い目、胴体は茶色でところどころに黒のブチ、手触りがやわらくツヤツヤとした毛並み、主食はしょう油を加えたお酢に漬け込んだ魚。

「自分たちの子どもだと思って大切にする」というのが表向きの理由ですが、庄造の大切にしているものを取り上げて報復をしたいのが本音でしょう。

仲介者をはさんで何度となく頼んではみましたが、リリーを溺愛している庄造は一向に手放そうとはしません。品子と別れた庄造はすぐにいとこと再婚したそうで、その福子という女性に手紙を送って交渉してみました。

後妻として石井家に招かれた当初は福子もリリーのことをかわいがってはいましたが、庄造の猫愛は尋常ではありません。朝昼晩の食事は常にリリーと一緒でなければ気が済まないようで、ちゃぶ台の上に並べるのもリリーの好みに合わせたものばかりです。

温かく脂っこい食べ物が大好きな福子は、猫と一緒に冷たいアジやイワシばかりを食べさせられることに嫌気が差していました。

夜になると庄造たちは蚊帳を張り巡らせた畳の上に布団を敷いて眠りにつきますが、リリーは夜具のすき間から器用に体を滑り込ませてきます。福子としては夫婦の秘密までのぞき見られているようで落ち着かず、せっかくの新婚生活を水入らずで過ごしたいのも本音です。

品子からの長ったらしい手紙を読み終えた福子からは、さっさとリリーをやっかい払いするように迫られていました。1週間ほど待ってほしいと言葉を濁していた庄造が、悩み抜いた挙げ句に下した決断とは?

読んだ感想

いちばん最初に動物名、次に男性の固有名詞、最後にはぶっきらぼうに女性が並ぶというタイトルからして異様ですね。

弱気でさえない荒物屋の店主・石井庄造や、抜け目がない品子や勝ち気な福子でさえも単なる脇役でしかありません。この物語の中では「リリー」と名付けられた雌猫こそが最上位に立ち、本当の意味でのヒロインと言えるでしょう。

ボンヤリと窓際から外の風景を眺めたり、3度のご飯に二杯酢の魚を食べる仕草がやたらとリアルに描かれています。石井一家が荒物屋を営む芦屋市の旧国道沿いや、品子の実家がある阪急の六甲登山口も物語の舞台にはピッタリです。

1度は離ればなれになった男女が1匹のキュートな猫をきっかけによりを戻す…といったありきたりなラブストーリーを期待していると見事に騙されてしまいました。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。

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