「ループ」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。
「ループ」を読んだきっかけ
「リング」に「らせん」といった、シリーズを基に製作された映画を視聴したことがきっかけとなり、読みました。 同シリーズの中でも、本作は唯一映画化がされていないため、内容が気になり手に取りました。
どんな小説?
「リング」シリーズ3作目に当たる本作ですが、読者の予想を裏切る驚愕の内容になっています。
ホラー要素は継承されつつも、デジタルの世界を題材にした現代にも通ずるシナリオ、世界の創造、現代を予言したような壮大なテーマで読者を翻弄し、過去シリーズと繋がりがあるようでかけ離れた展開は、読む者を翻弄し困惑させます。
単純にホラー要素が強かった前作までとは打って変わって、本作はSF作品のような想像力を刺激する内容となっており、文字だけで話の情景を伝える小説の優位性を、遺憾なく発揮した作品でもあります。
あらすじ
近未来、人工生命プロジェクト「ループ」の研究員・二見秀幸とその息子・馨(かおる)は、地球上に存在する重力異常ポイントで居住する人々が、通常の人間に比べて長寿であることが分かり、異常ポイントの1つであるニューメキシコ州の村に訪れる約束をします。
しかし、その約束から間もなく、秀幸は世界中で猛威を振る「転移性ヒトガンウィルス」に感染していることが判明し、発病してしまいます。
それから時は経ち、医学生となった馨は秀幸が入院する大学附属病院で知り合った、シングルマザーの杉浦礼子と親密になり、肉体関係のある男女の仲に発展します。
礼子は馨との子を妊娠しますが、彼女もまた父親と同じく「転移性ヒトガンウィルス」の感染者で、余命幾ばくもない危険な状態でした。
このウィルスは人のみに限定せず、他の動物や植物にまで感染する未知のウィルスで、世界中で蔓延し地球上全ての生物を絶滅させるほどの力が危惧されていましたが、例のニューメキシコ州の村でウィルスを克服したという情報を母親から仕入れ、自分の家族を救うために現地へと旅立ちます。
ウィルスの正体を暴く過程で、馨は秀幸が関連している「ループ」の詳細(コンピューター上にプログラムされた架空世界を基に、生命の可能性や進化をシミュレーションする)や、プロジェクトのキーマンである「タカヤマリュウジ」や「ヤマムラサダコ」達の存在、「ループ」の世界が現実世界とリンクしていることを知りました。
しかし、「ループ」内の架空世界が「リングウィルス」の蔓延により凍結された今、核心に迫りながらも真相を追及することが出来ませんでした。
真相追及が暗礁に乗り上げたように思われましたが、10年前に同地のロスアラモスに存在する研究施設に移った人物からヒントを得られると確信した馨は、プロジェクトに携わるトップの人物、クリストフ・エリオットと出会います。
馨は、エリオットからタカヤマの生まれ変わりが自身であることを告げられ、同時にウィルスの抗体を持つ馨に協力し、彼の身体からワクチンを生成した後、「ループ」の世界へと送り込みます。
読んだ感想
本編でも記されているように、前作までの「リング」・「らせん」の世界が、本作のキーである仮想世界の出来事であったことに、まず驚きです。
原作までのファンや背筋が凍るような恐怖を期待した方々の期待を裏切るかのようなこの設定は、大胆であるのと同時に原作者・鈴木光司氏の文才の高さ、スケールのあるシナリオ構想に驚嘆させられました。
同シリーズの代名詞である、「貞子」というジャパニーズホラーのシンボルがあまり関与しなかったのは正直残念ではありますが、インターネットが普及した現代に対する警鐘も込められたように感じました。
空想と現実はリンクするという言葉を様々な媒体で耳にしますが、壮大なテーマと描写で読者を魅了する本作の前では、こうしたありふれた月並みな言葉にも信憑性が増します。
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