「死ねばいいのに」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。
「死ねばいいのに」を読んだきっかけ
本屋で文庫本を物色していて見つけました。何よりタイトルのインパクトが強い。文庫本のカバーのデザインも美しいけどミステリアスで、夜夢に出てきてうなされそうな感じ。本は厚めだったけど、読むしかないと思いました。
どんな小説?
一言で言えば、殺人事件の謎解きストーリー。謎の男が関係者を訪ね、さまざまな質問や会話をしていくなかで、次第に被害者の生活やとりまく人たちとの人間関係、なぜ殺されなければならなかったのかがしだいに明らかになっていく小説です。
あらすじ
亜佐美という若い女性が殺されて、犯人がわからないまましばらく時が経ったあたりから、この小説は始まる。亜佐美の上司だった山崎という男の元に、ある日ケンヤという若く口の悪い男が訪ねてきた。
山崎は会社の中で上からも下からも責められ、それでも自分のプライドと地位と家族のために働いている立場。
ケンヤはそんな山崎に不躾に様々な質問を次々とぶつけてくる。亜佐美が死んだことをどう思っているか、亜佐美のことをどう思っていたか、亜佐美とはどういう関係だったか、妻のことはどう思っているか…。
最初は冷静さを保ち、あたありさわりのない返答をしていた山崎も、しだいにケンヤのペースに飲まれ、しだいに亜佐美や会社や家族に対するドロドロした感情があらわにされて行く。ぼろぼろになりながら山崎は気づいてく。
「自分は亜佐美のことも妻や息子のことも上司のことも何もわかってはいなかった」と。ケンヤはさらに様々な人を訪れる。亜佐美の隣人、彼氏、母親、事件を担当した刑事。同じようにケンヤは、亜佐美との関係性、どう思っていたか、死んだことをどう思っているか、次々に質問をぶつけていく。
最初はみんな、ケンヤが誰なのか訝しがり、警戒し、無難に「亜佐美はいい人だった」「亜佐美が死んで悲しい」と口にする。
だけど、ケンヤに突っ込まれていくうちに、亜佐美に対する負の感情が吐き出され、同時に各自が抱えた生きずらさも露わになっていく。同時に普通に平和に暮らしているように見えた亜佐美の生活や彼女をとりまく人間関係、彼女が何を思いながら生きていたかがしだいに見えてくる。
ケンヤはいったい誰なのか。なんのために関係者に亜佐美のころを聞いてまわっているのか。最後はケンヤと弁護士の会話で、この小説は終わります。
読んだ感想
誰かが殺されて近所や同僚なんかがインタビューを受けると、たいていは「いい人でした。」「殺されてしまってとても残念」というような答えが返ってくると思います。
誰も故人を悪く言う人はいないし、自分と故人が仲がよくなかったことをあからさまにする人もまあいない。
ましてや、突然訪ねてきた見知らぬ若い男に本音を話す人なんていない。ケンヤが若者特有の無遠慮さで質問をすると、最初はみんなあたりさわりのないことしか答えないけど、核心をつっこまれるとタジタジとなって、なぜかいろいろなことを喋ってしまう。
中には、自分では意識していなかった亜佐美への感情にそこで初めて気づいて混乱し、ケンヤに救いすら求めたりもします。なかなか読みごたえのある1冊でした。
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