「約束」小池真理子のイヤミス短編小説【あらすじ・感想】

「約束」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「約束」は、17篇の短編小説集「午後のロマネスク」で読むことができます。

「約束」を読んだきっかけ

「約束」を読んだきっかけは、作者の小池真理子さんのご主人が一昨年お亡くなりになったと知り、あらためて読んでみたくなったからです。

御夫婦ともに直木賞作家ということで 、過去の作品に急に興味が出ました。

どんな小説?

夫に先立たれた女性が私小説を出版したことで、偶発的な事件に巻き込まれてしまうイヤミスストーリーです。

作者独自の、恐怖と不条理が混じり合った世界観が展開する快作です。因果応報と言いましょうか、純愛が悲劇に変わる過程が唐突で、不思議な読後感がある物語です。

あらすじ

「約束」のあらすじ・ストーリーは、長年、連れ添った伴侶に先立たれて悲嘆に暮れる中嶋市子が、夫の同級生だった出版社経営の男のすすめで「私の未亡人日記」を執筆する物語です。著書は出版関係者から大絶賛されますが、売上はいまひとつでした。

しかし、不眠におちいり肝臓まで壊していた市子の心は、自己の半生を本に書いたことで少し元気を取りもどします。また、憑き物が落ちたように夫の死の悲しみから立ち直ります。

本を出版してから市子は、ある男との約束をひんぱんに思い出し、心待ちにしています。実は、夫ひとすじに見える中嶋市子ですが、自宅を設計した男と不倫していた過去があります。

恋愛感情を打ち明けあうも、心惹かれるだけの間柄だったふたりが、市子の母の病気がきっかけで2回だけ肉体関係を持ってしまいます。別れの際に市子と設計士は、10年後にたがいの伴侶が亡くなっていたら一緒になりましょうと約束します。

本の出版と時間の経過で少しずつ癒された市子は、約束の10年目を迎えていたことに気がつきます。一方、市子が出した本の出版社に、だらしのないアルバイト学生が勤めていました。彼はかかってきた電話の相手に、違う著者の電話番号を教えてしまいます。

それが、市子のナンバーでした。異常者が自分の家に向かっているとも知らずに不倫相手の電話をいまかいまかと待ち続ける市子に、危機が迫ります。そしてついに、同じ苗字の別人の作家のストーカー男が、中嶋市子の自宅へやってきます。

宅配業者のフリをして侵入するやいなや襲いかかってきた異常者にひどい暴力を受けた市子はどうなるのか。そして、なかなか連絡を寄越さない設計士の男にはどんな事情があるのでしょう。 最後に、またもや怠慢なアルバイト雇った出版社にかかってくる電話による驚愕のラストが待っています。

読んだ感想

「約束」を読んだ感想ですが、どうして冒頭でやる気のない出版社のアルバイトの描写があるのか。はてなマークで始まる物語の、そこがすべてのポイントです。

出版社に勤めていた作者らしいリアルな話が展開していきます。小池真理子さんの小説は、いつもちょっとだけ共感できない女性が主人公です。

でもそれってもしかしたら、わたしたちが本当はやってみたい心の中の願望や想いが具現化されているからかもしれません。

それに続く道徳感あふれるスカっとしたオチが、作者の魅力の秘密です。ラストの幕切れの良さに、さすがイヤミスの女王と脱帽させられるお話です。

物語が迎えた結末の原因が怠慢な出版社の人事のせいだったのは、市子の不徳の致すところでしょうか。主人公の中嶋市子の状況が、作者の小池真理子さんの今の状況と重なり、ゾッとする読後感です。

ご主人に先立たれたことや火事、お子さんがいない点や依頼されて書いた夫についての寄稿文のエピソードなどが、25年前の本作そのもので不思議です。市子と小池真理子さんが結婚していた年数もほぼ同じです。

「約束」は、17篇の短編小説集「午後のロマネスク」で読むことができます。

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