「Aではない君と」殺人を犯してしまった少年の心の葛藤を描く小説【あらすじ・感想】

「Aではない君と」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「Aではない君と」を読んだきっかけ

私は薬丸岳さんの本が好きだったので発売された瞬間購入し読みました。薬丸岳さんの本は大人向けの本も多いですが今回は少年法についてだということで新鮮だったので、とても楽しみに待っていました。

どんな小説?

少年法をもとに、翼(少年A)の心の葛藤を描く物語です。本中に登場する家族はとにかくリアルでした。きっと本当にこんな両親もいるし、彼らに振り回される子も必ずいる、現実的な話の展開に思わず涙するでしょう。

この本の主人公でもある翼は果たして加害者なのか、被害者なのか、読者自信によっても解釈が異なってくるのではないでしょうか。

あらすじ

吉永圭一は妻と離婚し、その子、翼とも離れて生活していました。彼自身翼とはしばしば会いコミュニケーションを取り合っていたようでした。しかしある日突然息子が殺人を犯したという情報を受け、両親ともに息子のもとへ急ぎました。

息子の翼は学校で仲の良かった藤井君を殺してしまったのです。次第に明らかになる真実ですが、父圭一は翼に問い詰めます。「悩みがあるならどうして相談してくれなかったのか?」翼は学校で藤井くんに名前ではなく「ヒコク」と呼ばれていました。

裁判ごっこのような遊びの中でいじめの被害にあっていたのです。毎日のように長い長い間、裁判は行われ、翼はじりじりと精神的苦痛を与えられました。圭一に詰められた息子はこう言いました。

「被告は親からも見捨てられた存在です。 可哀そうな生い立ちなのです。 でもいつも有罪になるんだ。」

藤井くんたちは翼が両親からも見放された存在であるということをネタに彼をあざ笑っていたのです。いじめは次第にエスカレートしてしまいました。

当時翼が大切に飼っていた猫「ペロ」を殺すよう指示しました。それをきっかけに万引きやハムスター殺しを強要させ、断わろうものならばペロを殺した動画を父親に送ると脅し、翼にはいくつもの罪をかぶせました。

圭一は頻繁にコミュニケーションをとっていたつもりでしたが、翼からの些細なSOSに全く気付かなかった父親。翼の罪を防げたのは、父親だけだったのかもしれません。

裁判では刑を言い渡れますが、出所後は父である圭一が見守り、ともにサポートすることを約束します。「精神敵に殺す」のと「物理的に殺す」のはどちらが悪いのか、という翼の問いには、誰も答えられなかったのです。

読んだ感想

非常にリアルな物語で思わず涙を流しました。私がもし少年翼の立場だったら、そう考えると胸が苦しくなります。少年法がどうとか、そんなものは関係なく殺人は大きな罪です。

しかし翼のように内気な子どもがいじめを受け、相談する相手もいなかった場合、誰が救いの手をささげるのでしょうか?一番の理解者であるべきなのは勿論両親ですよね。「仕事が忙しい」なんて言い訳は決してしてはなりません。

私は子どもは遠慮深いものだと思います。忙しそうにしていたら相談さえもできないし、「もし嫌われたら」なんて考えて何も言えなくなります。

たとえ離れていても、少しの変化・違和感を察し、小さなSOSに気づいてあげるべきです。加害者側からみた作品も、様々な気づきがあって面白いのでぜひ読んでみてください。

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