「その時までサヨナラ」山田悠介の家族をテーマにした小説【あらすじ・感想】

「その時までサヨナラ」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「その時までサヨナラ」を読んだきっかけ

当時中学生だった頃に、山田悠介さんの小説にハマり、片っ端から著者の作品を読み漁っていたときに書店で見つけました。

著者はホラー系の内容が多く、今回の作品は一味違った内容になっていそうで興味を持ち、読み始めました。

どんな小説?

ホラー系の小説を得意とした作家、山田悠介さんの家族をテーマにした小説です。

仕事人間の主人公が、人の心の暖かさや家族と向き合う時間の大切さを、謎の女性宮前春子を通じて体感し成長するという内容になっています。

山田悠介さん独特の奇妙な世界観による設定でありながら、しっかり泣ける内容になっています。

あらすじ

大手出版社の編集長で人気作家を担当する森悟は家庭を顧みず仕事ばかりを優先させた結果、妻の亜紀に愛想を尽かされ息子を連れて家を出ていかれます。

そんな中で、亜紀と息子が向かった実家方面で震災が発生します。息子の無事は確認できたが妻は行方がわからなくなっていました。

息子と慣れない生活を送る中で亜紀の友人と自称する宮前春子がやってきて仕事や人生に対しての向き合い方が180度変化していきます。

仕事人間だった悟が徐々に家事を覚えるようになり、息子を幼稚園に連れて行くようになるなど息子や宮前春子と過ごす時間が増えていきます。しかし幸せな時を過ごしていく中で奇妙な疑問が発生する。

妻の友人を名乗る宮前春子は実は本名も違えば、妻とはなんの接点もない霊能者だったのだ。なぜ宮前春子は嘘をついてまで悟や息子に近づいてきたのか。そんな疑問を払拭できず、問いただしても誤魔化され、ついには宮前春子と追い出していしまう。

しかし宮前春子を追い出して以降、息子が心を開かなくなり、再び悟と息子の間には距離ができてしまいます。宮前春子もしくは本当の母親である妻の亜紀の存在が必要になり、当時震災直前に妻が何を思って実家方面に向かったのか調査することになります。

妻の行動を調べていくうちに、とある寺と霊能者・宮前春子の実態が見えてきて、追い出した宮前春子の行方を探します。

寺の住職に宮前春子の霊能力について聞き出しているうちに主人公は一つの仮説から確信へと変わる真実にたどり着き、宮前春子の居場所までたどり着きますが、そこですべての真相を聞かされます。

妻は亡くなっていたこと、震災のときたまたま同じ場所にいた霊能者である宮前春子が妻の魂を自分に乗り移らせて、期限付きではあるが体を貸していたことなどが明らかになったのです。

その後、宮前春子(妻)に別れを告げ、悟は今後の人生で息子とともに過ごす時間を大事にして生きていくことを誓います。

読んだ感想

仕事人間の森悟の家族に対する態度に序盤は辟易していました。仕事の上でも出世争いに奔走し、うまくいかないことがあれば周囲や家族に当たるなど目も当てられない状況です。

震災後、家族の心配もせずに仕事を優先する悟には怒りを覚えました。大抵の小説が、読者は主人公と同じ目線に立ちやすいですが今回は全く主人公に共感できませんでした。

しかし宮前春子登場以降、主人公とともに家族とは何なのか、家族の大切さを徐々に読者にも伝わってくるような感覚を覚えました。

最後の伏線が回収され、すべての真実が明らかになったときには、成長した悟と一緒に泣いていました。ここまで家族に対して考えさせられた作品はなかったので余計にです。

読後は、もっと家族と一緒の時間を実生活でも大切にするようになりました。確実に自分も家族に対する価値観を変えさせてくれた、最高の内容でした。

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