「英雄の書」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。
「英雄の書」を読んだきっかけ
宮部みゆきさんの本が好きで、どれを買おうか本屋で迷っていた時、藤田新策さんの描かれた、童話のような表紙に惹かれて手に取りました。
新潮文庫から上下で出ているものを買いましたが、読んだ後に見返すと重要な場面が描かれていることがわかります。
どんな小説?
フィクション作品なのですが、現実のいじめ問題などが入っているので、その世界や人物の存在を信じたくなります。
学校生活のなかで起こってしまったいじめ問題から空想の世界に逃げるわけではなく、自分が犯した罪が許されるわけではなく、いじめどうやっても理不尽だなと感じました。
あらすじ
小学生の友理子は普通の生活を送っていましたが、ある時中学生のお兄ちゃんが、同級生を殺傷したと連絡が入りました。お兄ちゃんはそのまま家に戻らずに失踪してしまいます。
家族はお兄ちゃんを信じる気持ちを持ちながらも、本当に同級生を殺傷したのか、何故そんなことをしてしまったのか、わからないままその後の対処に追われて日々が過ぎます。そんな時に友理子は、お兄ちゃんの部屋で話すことが出来る本に出会います。
その本は、お兄ちゃんが同級生を殺傷した理由やどこへ行ったかなども知っているようでした。その本はお兄ちゃんは「英雄」に魅入られてしまったと友理子に教えます。
本は友理子に、お兄ちゃんを忘れて普通の生活を続けるように言いますが、お兄ちゃんの事件が広まったことで、友理子は学校に居場所がないと感じ始めていました。以前行ったことのある大叔父さんの別荘に、自分やその英雄が居たと本は助言をくれます。
友理子はその別荘にある図書室で、賢者と呼ばれる本からお兄ちゃんが違う世界へ行ってしまったことを聞き、お兄ちゃんを連れ戻す決意をします。賢者から力を授けられ「オルキャスト」となった友理子は別の世界へ移動することが可能になります。
学校でモンスターに襲われてしまった時に助けてくれた「狼」と呼ばれる英雄を追跡する者の助けを借りて、友理子はお兄ちゃんを救う旅に出かけます。架空の世界である本の中で友理子はお兄ちゃんの手がかりを追って行きます。
そうする中で、一緒に旅をしている無名僧の「ソラ」の様子がおかしくなっていきます。一緒にお兄ちゃん探しをしてくれているはずの狼の一人「アッシュ」は、何か知っているようですが、友理子には教えてくれません。
人々がモンスターに襲われて悲惨な状況を目の当たりにする中で、友理子はお兄ちゃんを探しながら、成長していきます。
読んだ感想
ファンタジーなのですが、お兄ちゃんの事件から物語が始まるので、本当にその世界や人物が存在するかのような、憧れる気持ちになります。
ゲームの中のお話の様で、このようなストーリーだとハッピーエンドで終わりそうな気がしますが、この物語の最後は完全にハッピーエンドとは言い難く、こんな子どもに過酷な運命だなと悲しい気持ちも残りました。現実と混ざって、理不尽だとも思います。
しかし物語の最初でお兄ちゃんが事件を起こしてしまっているので、こうするしかなかったのかなという想いもあります。
著者が、現実のいじめ問題とファンタジーとを上手く組み合わせていると感じました。友理子たち家族にとっては辛い結果になりましたが、著者は最後に、読者にはその先のお楽しみも用意してくれています。
Amazonや楽天で購入して読むことができます。電子書籍はありません。
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honto では、紙の本を購入することができます。