「楽園とは探偵の不在なり」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。
「楽園とは探偵の不在なり」を読んだきっかけ
発売以降、とにかく話題になっていたので気になりました。各ミステリ賞に入選しており、発売年の話題をかっさらっていた本作。
ミステリ作家の方々が感想などをツイートされていたり、書店で大きく展開されていたりと、各所でよくタイトルを見かけていました。
そしてなにより「二人以上殺した者は地獄行き」というインパクトのあるあらすじに惹かれ、どうしても気になって読みました。
どんな小説?
「楽園とは探偵の不在なり」は、斜線堂有紀先生によるミステリー小説です。舞台は5年前に突如“天使”が降臨し、「二人以上殺した者は“天使”に地獄へ引き摺り込まれるようになった世界」。いわゆる特殊設定ミステリーです。
一人殺してもセーフですが、二人以上殺したら地獄行き、という絶対的なルールが世界に適用されているということです。そんな世界の中で、連続殺人事件が発生。ルールがある以上、起こるはずのない連続殺人事件に、探偵の青岸焦が挑みます。
あらすじ
5年前、突如降臨した“天使”。しかしそれは、人間が今まで想像していた神々しさは無く、身体は灰色で手足が異常に長く、コウモリのような羽を持つ不気味で禍々しい見た目をしていました。そんな天使がうようよと街中を飛び回るのが当たり前の世界になったのです。
そして、その天使の登場によって、世界の常識が大きく変わりました。それは、「人を殺すと即座に地獄に落とされる」というルールが生まれたこと。
しかも、一人を殺しただけなら天使が地獄に引き摺り込むことはないのです。何故か「二人以上」殺した者だけが、死ぬよりも辛い苦痛と共に、地獄の業火に包まれてしまう。
このルールによって、人々の暮らし、そしてなにより倫理観に大きな変化が現れ始めるのです。それは「一人ならセーフ」なのだという考え方が増えること。
そして「どうせ地獄に落ちるなら一度でできるだけ多くの人を巻き込んでしまおう」というテロが増えること。ひとつの絶対的なルールの出現によって世の中は大きく変わり、人々の倫理観や感覚の変化により起こる悲劇や事件もまた変わっていきました。
そんな世界で、細々と探偵業を営む青岸焦。彼は、大富豪の常木王凱に「天国が存在するか知りたくないか」と誘われ、天使が集まる常世島を訪れます。そこで待っていたのは、青岸の他に招かれた天使と因縁のある人々と、そして、あり得ない“連続殺人事件”。
二人以上殺せない世界で、犯人は如何にして連続殺人を行っているのか。そして、このルールが生まれた世界における「探偵」の存在の意味に思い悩む青岸にも、忘れられない過去がありました。
この物語はミステリーでもあり、天使のルールによってもたらされる不条理な悲劇によって、さまざまな感情が浮かび上がってくる人間ドラマでもあります。
読んだ感想
とにかく設定が面白くて先が気になり一気読みしました。文章も読みやすく、キャラクターたちもわかりやすいのでどんどん読んでいけます。
ファンタジーのような設定ですがトリックやロジックはしっかりとしたミステリーであり、特殊な設定の中で描かれる探偵の物語も熱くて引き込まれます。正義とは何か、倫理の崩壊と不条理の中で挫折した探偵の再生を描く人間ドラマでもあります。
ネタバレになってしまうので詳しくは言えませんが、不気味な天使や思わず唸るような意外なトリックなど、インパクト抜群で読んでいる途中も読み終わった後も非常に楽しい、新しいエンタメでした。
この世界だからこその謎解きと真相が綺麗に紐解かれていく終盤は圧巻。ページをめくる手が止まりませんでした。同時に、「探偵」という概念をより好きになる一冊でした。
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