「駆け込み訴え」あらすじ・感想

「駆け込み訴え」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「駆け込み訴え」を読んだきっかけ

著作権の切れた純文学の作品が無料で見れるサイトがあり、そのサイトで読みました。 太宰治の作品が好きで、作品一覧の中に当作品が含まれており、タイトルも気になったのでその流れで読みました。

どんな小説?

イエス・キリストの弟子ユダが主人公で、彼がイエスを裏切り、密告先でキリストについて独白する短編小説です。 もともとは新訳聖書の聖書の話が元になっています。

ユダの視点から見たイエス像が語られています。 一見ユダはキリストの事を貶め、憎んでいるようにも見えますが実際のところは…? 太宰治が聖書でも有名な、ユダの裏切りについてどう考えているのかが分かるお話です。

あらすじ

イスカリオテのユダはイエス・キリストを裏切った後に、キリストを殺害して欲しいと密告しに行きます。 そしてその先で長々と自分の師であるイエス・キリストについて語り始めます。

ユダが語るには、キリストは自分がいないと何も出来ない頼りない男で、そのために自分がどれだけの苦労を被ったかを延々と話し続けます。

自分は師の為にこんなにも苦労して奔走しているのに、それを全く認めず、自分に対してつれない態度をとり続けるキリスト… 自分はこんなにあなたを愛しているのに。 こんなに身を尽くして捧げているのに何故そんなに冷たい態度なのか。

そう思っていた矢先の事、キリスト一行はある一人の女に遭遇します。 ハプニングがあり、ユダはその女を叱るのですがキリストはその女を庇います。その時のキリストのただならぬ様子を見て、もしかするとキリストはその女に恋のような気持ちを抱いたのではないか?と訝しむユダ。

それまでキリストはどんな女に好かれても冷静な素振りを崩さなかったのに、今回はなんとだらしがない。 その時、強烈な嫉妬が身を駆け巡るのでした。キリストが受け入れてくれない不満がつのり、その感情はやがては憎しみに変わっていきます。

そしてついにユダはある恐ろしい計画を思いつくのです。キリストを自分の手で殺そう。そして殺した後自分も死のう。その決意を固め、キリストを殺害する機会を窺うユダでしたが、そんな時に町の祭司長や民の長老達がキリストを殺害する事を決議したらしい噂を耳にします。

キリストの命を狙う者は他にもいたのです。ユダは他の人に殺されるくらいなら自分が殺すと思っている時に、キリストと弟子達とで最後の晩餐の機会が訪れます。

その時、ユダは自分がキリストを殺そうと思っている事を見抜かれ、それを他の弟子がいる前で公表されます。そして、ユダはそこから去りイエスの場所を密告しに行くのでした。 そこから物語冒頭の独白に繋がってゆきます。

読んだ感想

一般的に言えば、ユダはキリストを裏切った悪、という認識が強いのですが、太宰治はそのようには描いていません。 もちろん解釈次第という事もあります。

ユダも悪という一枚岩な見方よりももっと人間味があり、キリストを愛するが故に最後には憎み殺すという内面的な揺れ動く気持ちを主に描いている所がユダに対しての親近感が湧きました。

そして話としてはシリアスなのですが、太宰治のユニークな文体がとても面白いのです。 噴飯もの、だとか必ず十字架、それに決まった。などこの話を読んで太宰治が好きになり、イメージが変わる事と思いますので是非一度読んで頂きたい作品です。

題材が難しそうでとっつきにくそうにも思いますが物語は短く、読みやすいお話だと思います。

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