「ごたごた気流」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。
「ごたごた気流」を読んだきっかけ
もともと私は本を読むのが嫌いだったのですが、塾の先生に半ば強引に星新一さんの本をすすめられ、読んでみて読書の面白さを知り、星新一さんの本を集めて読むようになりました。
この本は、街の古本屋で買ったのですが、この「ごたごた気流」というタイトルがコロナ禍の現状と似ていると思い、思わず手に取ってしまいました。
どんな小説?
著者・星新一の一話完結型の数十ページの短い物語が12話書かれた本です。
この本のタイトルである「ごたごた気流」という物語は、世の中のあらゆる事件をテレビ局の記者がスクープに取り上げていくのですが、スクープの取り上げ方も斬新で、人間のエゴの部分が分かる作品です。
あらすじ
ある日、才能のない愚かなテレビ局の記者である息子を救ってやりたいと考え、父親がある装置をつくりあげます。その装置は、事件発生機というもので、レーダーの指示する方向にカメラを向ければ色々な事件を映すことができます。
この事件発生機のおかげで、息子は浮気現場や、交通事故、麻薬取引の現場などを映すことができ、それらをスクープにしました。
ひったくり犯を大衆が袋叩きにするシーンや、現金輸送車が横転し、ばらまかれた紙幣を持ち逃げしようとするシーンを映しだすこともあったが、大衆が正義感という名のもとに誰かをいじめる一方、大衆は悪いことをしてでもほしいものは手に入れたいという利己的な面も垣間見られました。
たちまち今まで活躍してこなかった息子が急に活躍するようになったので、周りの人からは、怪しまれたり羨まれたりしました。
次第に彼の才能を認めるものも現れチヤホヤされるようになってきました。彼自信も、事件が起きて、大衆がそれらを見て楽しんでいることや大衆の利己的な面を映し出すことに満足していました。
それと同時に、銀行の預金を引き出せないという騒ぎが起きたり、不時着した飛行機から国家機密の文書の内容が漏洩したり、ある国の大使館がスパイに武装されるなどして、彼は段々と事件が大きくなっていることに不安なっていきました。
しかし、彼はカメラを回すことをやめませんでした。なぜなら、カメラを回すのをやめれば、大衆の利己的な面を映し出すことができず、周りの人からもチヤホヤされなくなってしまうからです。
しかも、自分で何とかしようとせず、父親に頼ろうとする大衆以上に利己的な面を持っています。最終的に、事件発生機は集中号が発生する国外へと彼を大衆以上に間違った方向へと誘うオチになっています。
読んだ感想
「ごたごた気流」を読んだ第一印象は、まさに「他人の不幸は蜜の味」だということです。
人間の矛盾している部分を描いています。現在私たちは様々な情報を得ていますが、自分にとって有益な情報だけでなく、芸能人のスキャンダルやゴシップ、犯罪や災害についての悪い情報も得ています。
これらの情報を知って「なんてひどいことを・・・」などと意見を言いますが、そのニュースを知った人も事件が起きてほしいという思いがあるからこそ、そのニュースを知るわけで、そういう自分の行動と意見が矛盾している人間のイヤな部分をもれなく描いているのがこの作品の醍醐味だと感じました。
コロナ禍で誰かを非難する声が多くなっていますが、「自分はどうなんだ?」と見直すべきだとも感じました。
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