「けさくしゃ」戯作の書き手が身の回りに起こった困り事の謎を解き明かす【あらすじ・感想】

「けさくしゃ」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「けさくしゃ」を読んだきっかけ

代表作「しゃばけ」を読んで以来、畠中恵さんの作品に魅了され、彼女の本を古本屋で見つけたら必ず購入しています。「けさくしゃ」も畠中恵の名前を見ただけで、迷わず手に取りました。

どんな小説?

演劇に劇中劇というのがありますが、その言い方に倣うなら小説中小説とでも言いますか、ちょっと変わった趣向の小説です。

さらに江戸時代の設定なのが一捻りなところ。現代の小説にあたる読み物は、江戸時代には戯作(けさく)と呼ばれていたそうで、その戯作の書き手である主人公が、身の回りに起こった困り事の謎を、戯作を創作することで解き明かしていきます。

あらすじ

主人公の柳亭種彦さんは、本名・高屋彦四郎知久という、小禄ではあるが立派な旗本です。実はこの人、実在の人気戯作者です。

この小説では人気が出る前、初めて戯作を書いた頃が時代背景になっています。家格が低く、御上の御役にも付いていない貧乏旗本で、腕っぷしは弱く、病弱で、カワユイ妻にメロメロでも、武士は武士。

武士たる者が、下々の民のお愉しみである低俗な戯作を書いて世に発表するなど、武士の沽券に関わるという時代。でもどうでも戯作創りが好きでしょうがない種彦さんは、お調子者の版元(今でいえば出版社なのだそうです)に乗せられて、偽名で初作品を出版しました。

事の起こりはお仙と長介と孝三の、お金が絡んだ三角関係結婚詐欺男女問題。この揉め事を戯作に書くことで、種彦さんは原因を推理して見事解決できました。種彦さんはこれをそのまま初作品として世に出したのです。

がしかし、恐れた通りといいましょうか、当然の如くといいましょうか、そのことで次から次へと困り事が降りかかってきます。

武家の跡継ぎが絡んだ子の、血の繋がった本当の父親探し、突然大人気となった覆面戯作者を巡る騒動、江戸と上方を股に掛けた盗作騒ぎのゴタゴタ、御公儀の御政道批判という打ち首獄門ものの恐ろしい一大事と、次々に頭を抱えるような出来事が起こります。

そして最後にはとうとう、芝居小屋で人死にまで出てしまう始末。

己の戯作が係わった芝居だったので、世を騒がす原因の一つを作ったと、最愛の妻を一人残して御腹を召すことになるやもしれぬ種彦さんが、いくら好きでも戯作なんぞに手を染めるべきではなかった、と後悔しても遅かりし。

でも好きなものは好きなんだし、と未練もタラタラ。戯作を創ることで、それまでの難問を解き明かしてきた種彦さんでしたが、はてさてこの度は如何相成りますことやら。

読んだ感想

肩の凝らないほのぼのお笑い推理小説。本作を私は勝手にそう分類しています。本格推理小説のように、複雑高度なトリックを駆使しているわけではありませんが、至極簡単だからこそ見落としがちな、小さな矛盾に着目して謎解きが展開されます。

例えば、繁華な街中で団子屋を開業するのに七両じゃ不足なのに、なぜ女は七両と言ったのか? といった簡単な疑問です。そこに人の性(しょう)や情や考え方などを絡め勘案し、答えを導き出すのが畠中流推理小説で、その時の人の描かれ方が魅力なのです。

困り事が起こるのですから悪人はもちろん登場しますが、主人公・種彦さんを始め、主要登場人物はみんな良い人ばかり。その人たちが知恵を絞って、力を合わせ、テンヤワンヤしながら良き結果を導き出そうというのですから、その結果は心温まるものになって当たり前です。

だからといって、謎解きがつまらないわけでは決してないのが、畠中恵さんの力量というものでしょう。結果、読後感のホンワカ温かく、スッキリ晴れやかなことはピカイチです。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。

その他、「けさくしゃ」が読める電子書籍ストアはこちらです。

コミックシーモア  BOOK☆WALKER  ebookjapan  BookLive!  honto  ブックパス

タイトルとURLをコピーしました