「かにみそ」蟹と人間の友情から描く食べるということ【あらすじ・感想】 

「かにみそ」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「かにみそ」を読んだきっかけ

面白いホラー小説はないかと古本屋で探していたところ、出会いました。買った時期が夏だったこともあり、その古本屋ではホラー小説や漫画を集めたコーナーがありました。この本もそこに並んでいた一冊です。「かにみそ」の何がどう怖いのか気になり、読むことにしました。

どんな小説?

この本は、「なんでも食べる」蟹と人間の男性の関係を描いた作品です。その蟹はただの蟹ではありません。

人の言葉を話し、意思を持ち、感情を理解する蟹でした。友情を育んでいく主人公と蟹の関係性、一人と一匹に起こる出来事が、「食べるとは何か」考えさせてくれます。

あらすじ

ある時、「私」は海岸で小さな蟹を拾います。蟹を飼うことにした「私」は、とりあえず蟹が食べそうなものを与えてみます。そうして日々を過ごすうちに分かったことは、それが「なんでも食べる」蟹であること、人の言葉を流暢に話すことができるということでした。

そして蟹と雑談を交わす仲までになった「私」でしたが、ある時、衝動的に人間を殺してしまいます。その処分方法に困った「私」は、あることを思いつきます。それは死体を蟹に食べさせる、ということでした。

人間を食べるかどうか、不安に思いながらも「私」は蟹に訊ねましたが、蟹は快く頷きました。そしてうまく死体を消し「私」は一安心します。

ところが、そこから「私」の身の回りでは、人が失踪したり、人の肉の塊が見つかったりなどの不審なことが起こり始めます。そんな出来事が連続して起こるうち、「私」はある考えに至ります。

「自分の見ていない間に、蟹が人を食べているのではないか」ということです。そうしてついに、「私」は蟹に話を切り出します。「私」のいない間に人を食べていただろう、という確信に近い予想を突き付けたとき、蟹はそれを認めました。

「私」の様子を見て、悪いことをしたと分かった蟹でしたが、何が悪いのかは分かっていないようでした。「私」の前で食べなかったことを怒っているのか、でも寝ている間に一気に食べたから苦しんではいないはずだ、と弁解する蟹。

そうして、「私」は、食べるわけでもないのに人を殺してしまった、という懺悔の念を感じ始めます。心身ともに苦しむ中、「私」は思います。蟹をどうにかしなければならない。そしてふと思いついたのが、「蟹を食べること」でした。

沸騰した鍋を用意し、眠っている蟹を水槽から出しました。湯気の立ち上る鍋の上へと蟹を持ち上げたとき、蟹は言いました。「生きることは、食べることだ」。そして蟹は、熱湯へ自分から飛び込んでいきました。

「私」は、蟹を食べました。今までにないほど芳醇で、うまいものでした。その後、蟹を拾った海へと足を運んだ「私」は、「生きることは、食べることだ」という言葉を噛み締めました。

読んだ感想

これ以上ないほど切ない、非常に奥のある一冊です。今まで一緒に過ごしてきた蟹を主人公が食べるシーンにはうるっときました。

「ぜんぶ食べて」という蟹の言葉通り、普段なら食べないような部位までも余すところなく食べていました。隅々まで身を取り出し、ひとつひとつを味わい、丁寧に食べる。その描写には迫るものがあったように思います。

それは筆者の表現力の現れでもありますし、私自身が物語に引き込まれていた事実の証明でもあります。この本の何が切なさを生み出しているのか、それは一概に言えないと確信しています。

しかし、この本を読んだ人が、読み終わった直後にほろりとしてしまうことは間違いないといえるでしょう。ホラー作品として紹介されることが多いようですが、是非とも「泣ける小説」として名を挙げたいと思います。

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