「あと少し、もう少し」中学生の駅伝大会を題材にした連作短編小説【あらすじ・感想】

「あと少し、もう少し」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「あと少し、もう少し」を読んだきっかけ

瀬尾まいこさんの著作を気になるものから順番に読んでいた過程で手に取りました。駅伝ものといえば三浦しをんさんの「風が強く吹いている」が有名ですが、こちらは中学生の駅伝ものです。

大会としての規模は大学生ほど大きくないであろう中学生の駅伝大会のお話はどんな感じなのだろうか、と興味を持ちました。

どんな小説?

瀬尾まいこ著「あと少し、もう少し」は、中学生の駅伝大会を題材にした連作短編小説です。

中学最後の駅伝大会のために集められた男子中学生6人のそれぞれにフォーカスしていく構成で、章ごとに語り手が移り、メンバー集めから駅伝の当日までが区間と重ねるようにして描かれます。

駅伝を走りたい人ばかりでもない寄せ集めのメンバーが、おのおのの抱えている悩みや葛藤に向き合い襷を繋ぐ姿に胸が熱くなります。

あらすじ

頼りない顧問のもと、寄せ集めのメンバーがぶつかり合いながら挑む中学最後の駅伝大会。襷(たすき)が?いだ想いに、溢れる涙が止まらない傑作青春小説。

陸上部の夏季大会や秋季大会よりも何倍も盛り上がる、学校をあげての一大行事、中学校駅伝。その大会を前に、陸上部の力のある名物顧問、怖くて厳しくて指導力抜群の満田が転勤となり、代わりの顧問として、陸上経験ゼロの、まったく頼りにならない二十代後半の女性美術教師、上原がやってきます。

メニューも組めない、アドバイスもできない上原に部員は不満をためていき、部長である桝井も愕然としますが、中学最後となる駅伝大会に強い思いをもつ桝井はめげません。

中学校駅伝は、女子なら12キロ、男子だと、6人で18キロを走ります。生徒数の少ない地方の学校は、陸上部の部員だけではなく、他の運動部などにいる足の速い人を集めて参加するのが常で、桝井の通う市野中学校もそうでした。

実力ある満田という指導者を失いながらも、桝井は、勝てるメンバーを揃えるべく、心当たりのあるいろいろな人に声をかけます。

なかなかいい返事がもらえなくても何日もねばり、なんとか揃えた6人は、中学入学のときに誘って一緒に陸上部に入った元いじめられっ子の設楽、周りからも遠巻きにされている不良の大田、気がよくて人の頼みを断れないジロー、吹奏楽部でプライドの高い渡部、桝井を慕う後輩の俊介、陸上部部長の桝井。

そして、頼りにならないわりに飄々として、肝の据わっている顧問の上原。 中学生という多感な時期、それぞれに思いや事情を抱える寄せ集めの6人。駅伝に対しての気持ちや温度も、性格や普段のスタイルもバラバラな6人が、駅伝を通して繋がり、県大会出場を目指して、一区から六区へと襷をつなぐなかで、ひとつの大きな束となっていきます。

読んだ感想

日々駅伝のためにしのぎを削ってきた……というわけではない、寄せ集めの駅伝メンバーは、実に個性的で、他人からみたらデコボコでいびつであろう、不思議な6人です。

表面だけをなでると、地味だったり明るかったり、悪かったりお気楽だったりしてみえる子たちも、蓋を開いてみれば、みんな中学生というあわいの時期の悩みや葛藤を抱えています。それぞれが語り手となる章で見えてくる、語り手を通した他のメンバーの表情の違いがまたみどころです。

同じ期間を目線と語り手を変えて何度もたどる構成ですが、版画のように、重ねるたびに彩りも深みも見えてくるものも深く色濃くなり、最後には鮮やかな感動が押し寄せます。

べつに走りたいわけじゃない。走りたかったわけじゃない。どうしても、どうしても走りたい。駅伝に対しての姿勢も温度もバラバラだった6人が、いつしか「みんなと、もっと走り続けたい」と、同じ気持ちになって繋ぐ18キロに胸が熱くなり、何度も涙を流しました。

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