「美しい星」時を超えて現代を痛烈に批判するSF小説【あらすじ・感想】

「美しい星」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「美しい星」を読んだきっかけ

美しい星を読んだきっかけ 金閣寺を読んだことで三島由紀夫に傾倒し、他の作品にも手を伸ばすようになったことがきっかけです。 その中でも毛色の違うと噂されていた美しい星を読むことにしました。 SFと思想小説を掛け合わせた新しいジャンル、というキャッチコピーにも惹かれました。

どんな小説?

美しい星はどんな小説? 宇宙人としての自覚を持つ大杉家の四人が、水爆実験によって引き起こされる世界滅亡の危機を救うため、秘密裏に活動を始める物語です。

その過程で、主人公である重一郎は宇宙人の視点から、人間社会を観察することになります。 重一郎たちが救おうとしている人間はどれだけ滑稽かつ傲慢で、そして美しいのか、それらが客観的な見地で描かれています。SF小説であり、思想小説でもある深みのある作品です。

あらすじ

美しい星のあらすじ・ストーリー 埼玉県にある屋敷から大杉家を乗せた車が走り出します。 彼らは空飛ぶ円盤を見て以来、宇宙人として目覚めていました。その日、再び空飛ぶ円盤が現れる知らせを受けた重一郎は、家族と共に町の外れの山に出かけます。

山のふもとで車を停め、坂を登ると展望台に到着しました。 円盤は4時30分から5時30分の間に南の空に現れると聞いていたため、固唾を呑んでその時を待ちます。しかし円盤が現れることはありませんでした。

大杉家の大黒柱である重一郎は、去年の夏に宇宙人として目覚めました。 誰かの呼ぶ声で目を覚ました重一郎が屋敷を出て夜道を歩いていると、突如として空に1機の円盤が飛行しているのを目にします。

円盤は激しく震えた後、東南の空に飛び去っていきました。重一郎はその瞬間、自分がこの世の者ではないことを察し、自らの素性を世間に隠そうと決意します。その後、人類を救うため、雑誌「趣味の友」の通信欄に仲間に向けた広告を出しました。

3月10日、仙台市大年寺の頂きで、羽黒真澄は曽根と栗田と落ち合います。 彼らもまた重一郎と同様に、宇宙人としての自覚がありました。白鳥座61番星の惑星からやって来た羽黒らには、大きな目的があります。

それは重一郎とは反対に「人類を滅ぼす」というものでした。 4月になると、羽黒、曽根、栗田の3人が大杉家を訪れます。 応接間に案内されるなり、羽黒たちは不完全な人間を滅ぼすべきだと主張します。

すると重一郎は、人間は不完全だからこそ希望を持っていると反論しました。 2人の論争は熱を帯びていき、疲弊してしまった重一郎はその場で倒れてしまいます。病院に運ばれた重一郎は、医師から末期の癌であると明かされました。

その事実に動揺していると、重一郎は再び宇宙からの通信を聞くことになります。その指示に従い病院を抜け出すと、家族と共に東生田付近の丘へ向かいます。 そして稜線に到達したとき、大杉家はついに円盤を目撃します。 今まさに着陸しようとしている銀灰色の円盤が、緑や橙に光の色を変えているところでした。

読んだ感想

美しい星を読んだ感想 読了後、無関心による罪はどれだけ重いのかと深く考え込んでしまいました。

もちろんですが内心の自由はあります。考えることを放棄するのは生きることを放棄するようなものです。 重一郎が宇宙人として人間を観察したときに、そのような事なかれ主義の社会が異様に映ったのだと思います。

しかし重一郎はそんな人類にいまだ希望を抱いていました。重一郎は作中で「何とかやっていくさ、人間は」と言葉を漏らしています。それは自分も同じ考えでした。

どんなにダメな社会であっても変わることができるのです。それぞれの環境や社会を変えようと熱く議論を交わす重一郎と羽黒を見て、胸が熱くなりました。 50年ほど前に出版された作品ですが、現代においても学ぶことが多い名著だと思いました。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。電子書籍はありません。

他の電子書籍サイトでも「美しい星」の電子版は読むことができません。

honto では、紙の本を購入することができます。

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