「鼻」芥川龍之介 鼻を短くする試みをユニークに描いた物語【あらすじ・感想】

「鼻」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「鼻」を読んだきっかけ

小学生の夏休みの宿題で読書感想文があり、芥川龍之介の本を購入しました。その後、中学の国語の教科書に羅生門が載っていたことから、ふと芥川の本を思い出し、改めて読み返しました。この単行本には複数の小説が載っていたのですが、この「鼻」が最も面白く感じ、印象に残っています。

どんな小説?

昔、京都に住んでいた長い鼻を持つ名僧が、鼻を短くする試みをユニークに描いた物語です。この僧は、自身の長い鼻を気にしていたのですが、他人から自分が長い鼻を気にしていることを気づかれるのを嫌がっていました。

そんな折、弟子が鼻を短くする方法を見つけてきました。そして、他人の目を気にしながら鼻を短くする方法を実践します。

あらすじ

昔々、平安時代の頃の話です。京都に禅智内供という名高い名僧が住んでいました。この僧は、名僧なのですが、鼻があごの下までぶら下がるほど長いことでも有名でした。食事中は不便で、みそ汁の中に鼻が浸かってしまうので、弟子に鼻を持ってもらうのが日常の食事の光景でした。

しかし、この僧が最も気にしていたのは、他人の目でした。陰で笑われているような気がしていたのです。そして、実は自分が長い鼻を気にしているのですが、それを悟られまいとしていました。そんな折、長い鼻を短くする方法を弟子が調べてきたのです。

その方法は面白い方法でした。初めに、鼻を水蒸気で蒸します。次に、蒸しあがった熱い鼻を、小僧さんに素足で踏んでもらいます。すると、鼻に脂が浮き出してきます。最後に、この浮き出た脂を毛抜きで抜くというものです。

この油は約3センチもありました。ある朝、努力のかいがあり、目をさますと鼻が短くなっていました。内供はこれで自分を笑うものはいなくなると内心喜びました。

しかし、数日が過ぎると奇妙なことに気が付きます。周りの人たちが以前よりまして、面白がっているようなのです。内供は次第に不愉快になっていきます。

そして、鼻が長かった頃をむしろ懐かしくなっていきます。ある嵐の夜、内供は鼻のあたりが熱っぽくて中々眠れませんでした。朝、目が覚めると嵐はさっていたので、縁側に出て深呼吸をしたのです。

そしてその時、あの昔と同じ呼吸の感覚がしたのです。あっと思って、思わず鼻に手を当てると元の長い鼻に戻っていました。その時、僧は元に戻った鼻をさすりながら晴れ晴れとした気分でした。嵐がさった朝と同じく、すがすがしい気持ちで、これで自分を笑うものはいないと思いました。

読んだ感想

長い鼻を持つ名僧が、弟子の小僧さんの鼻を短くする試みをユニークに描く様子は面白く、楽しくよめる小説です。朝ごはんで鼻を小僧さんが持ち上げる光景を想像しました。

そして、時々鼻を持ち続けることに疲れた小僧さんが眠って手を放してしまい、鼻がみそ汁に落ちてしまうこともありました。鼻を短くする方法の実践なども含め、物語としても面白いのです。

そして、素晴らしいのは、長い鼻を気にする自分や、それを見て面白いと思う他人の目が交差する心理描写が絶妙に描かれています。

一度は治療の効果があり短くなった鼻が、もとに戻ってしますのですが、ここでも不幸を克服したものを正直に喜ばない人間模様が描かれています。最後は、嵐が去った爽快な朝に、鼻が元に戻り晴れ晴れとした気分になって終わります。他人の目を気にしていたことが患いの原因だったのです。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。電子書籍はありません。

他の電子書籍サイトでも「鼻」の電子版は読むことができません。

honto では、紙の本を購入することができます。

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