「ふたご」SEKAI NO OWARIのメンバーであるsaoriが描いた孤独な少女の物語【あらすじ・感想】

「ふたご」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「ふたご」を読んだきっかけ

書店で偶然、SEKAI NO OWARIのメンバーであるsaoriさんが書いたというエッセイ集を見つけたことがきっかけです。

購入して読んだ後「なんて素敵な文章を書く人なんだ!」と驚き、他の作品であるこの小説「ふたご」も読みたくなったため購入しました。

どんな小説?

独特な雰囲気を持つ少年と、そんな彼に惹かれている孤独な少女の物語です。中学校時代から話はスタートするのですが、その後、少しずつ成長していく過程が丁寧に描かれています。

小説自体は少女目線で進んでいくのですが、内側に渦巻く複雑な心模様を生々しく書き表してる作品です。

あらすじ

孤独な中学校生活を送る二年生の少女・西山夏子は、ある時、一年先輩の異彩な少年・月島悠介と出会います。言葉を交わすうちにあっという間に仲良くなった二人。そんなある日、夏子は「友だちがいない」と月島に涙を流しながら告白します。

すると月島は「お前の居場所は俺が作るから、泣くな」とそのとき夏子がもっとも欲していた言葉をかけます。以降、夏子にとって月島は、なくてはならない大きな存在になっていきました。

しかし、時は流れます。高校に入学した月島と、三年生になった夏子。進路、恋人、互いの認識の相違。過去の形に縛られ、思うように抜け出せない夏子と、どんどん先に変化を求め進んでいく月島。

二人はどうしようもないほど、様々な部分で異なる存在でした。音楽関係の高校に行くことを目指し、小さいころから続けてきたピアノの練習に打ち込む夏子に、月島は冷たい態度を取ります。

そんな彼がぽつりと打ち明けた「頑張ることに意味を見出せない」という言葉。夏子は理解に苦しむも、なんとか当たり障りのない言葉で慰めようとしますが、月島にすべて突き返されてしまいます。

「頑張れないなら、それでもいいじゃない」と言えば「そう簡単にはいかない」と返され。「何が気になるの?」と問えば「みんなが乗ってる列車に乗れない人生は、非難されるから」と返される。

世間に、すべてに対して徐々に「むかつく」と苛立ちを隠せなくなっていく月島の姿に戸惑う夏子。何の言葉をかけるのが正解なのか、どうすれば彼に寄り添うことが出来るのか。すれ違ったり、ぶつかったり、傷ついたり。

この先も幾度となく二人に降りかかる数々の試練。時には一番近くにいるのに、時には一番遠いところにいってしまう不思議な関係。ある意味、共依存にも見える奇特な付き合い。それでも二人は離れられず、結局何年も互いの人生に干渉し続けることになり…というお話です。

読んだ感想

まず読み終わって最初に浮かんだ感情は「もう終わってしまった」という喪失感でした。長編作品ではありますが、一つ一つの物語が細かく小分けにされているため大変読みやすい作品になっています。

しかし、それだけにあっという間に読み終えてしまいました。少し前までは中学生だった二人。言葉の意味を考えるゲームをしたり、レンタルショップに映画を借りに行ったり。そんな当たり前の日常を過ごしていたのに、数ページめくると、もう月島は高校生。夏子こと「なっちゃん」は中学三年生に成長しています。

私は特に、この高校生になった月島が進路のことで悩む夏子に対し「頑張ることができない」と打ち明けたシーンが強く印象に残っています。私自身どうしても努力が出来ない人間を知っているので、このあたりから月島に強く感情移入することができました。

月島はなっちゃんを照らし導く太陽のような役割を持つ人間として描かれている箇所がありますが、彼はずっと彼にしか見えない世界で孤独に戦っていたのかと思うと複雑な気持ちになります。

根本的な部分が違うなっちゃんでは、月島を照らす太陽になりきれなかった点も皮肉のように感じられます。小説全体の評価はとても良かったです。第二部から若干の無理やり感があった感じは否めませんが、綺麗にまとめられていたと思います。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。

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