「暗幕のゲルニカ」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。
「暗幕のゲルニカ」を読んだきっかけ
タイトルだけはずっと知っていたのに読んだことがありませんでした。もともと原田マハさんの作品が好きで色々読んでいますが、こちらはなぜか読んだことがなく…。久しぶりの連休休みの時に本が読みたいと思い、以前から気になっていたこちらを読むことにしました。またどっぷり世界観に浸りたいと思いながら手にしました。
どんな小説?
原田マハさんと言えば数々の美術小説を書くことで有名ですが、本作品もテーマは美術。代表作は「楽園のカンヴァス」が有名で秀逸な作品だと思います。今回は「ゲルニカ」というピカソが描いた絵を軸にフィクションのお話です。
原田マハさんの小説の面白いところは、実際の画家や作品がお話に出てくるところです。どれもフィクションなのですが、もしかしたら事実かもしれないというワクワク感を感じることができるのが魅力的です。
あらすじ
今回のお話は美術と戦争が大きなストーリーの柱になっています。何度も過去と現在を行き来して進んでいきます。ゲルニカと言えば、ヨーロッパでは非常に有名なアート作品。スペインが攻撃を受けた瞬間がスペイン出身のピカソによりモノクロで描かれています。
こちらは巨大なカンヴァスに描かれており、ピカソ作品の中でも珍しいモノクロということが余計に戦争の無惨さを伝えています。今もヨーロッパでは歴史や美術の時間に学ぶ、大きな作品です。
小説の中で、ピカソがこの絵を生み出すシーンや葛藤、人間模様が過去の時空として描かれています。
そして、小説の中で時空が現在に移ると、時は2001年9月11日。アメリカで同時多発テロがあった年です。ニューヨークのMOMA美術館で働く主人公・瑶子は、夫と不自由ない生活をしていましたが、この同時多発テロにより夫が亡くなってしまいます。
アートに親しんだ瑶子ができることと言えば、やはりアート。戦争の無惨さを伝えるピカソのゲルニカを、スペインからアメリカニューヨークへ運ぶことに力を尽くすことを決意します。MOMAの企画展で展示するために瑶子はスペインに旅たちます。
ここで出会う人々が、とてつもなく権力や富がある美術愛好家たち。彼らの物事への思考や取り組み方はスケールが大きく描かれています。そして瑶子はゲルニカを「奪う」つもりで動きます。
読んだ感想
非常に面白かったです。やはり原田マハさんの美術への愛をたっぷり感じることができました。実在の美術作品とフィクションを混ぜているところに毎度ドキドキします。
ストーリーにも躍動感があり、何度も過去と現在を行ったり来たり楽しかったです。ピカソは実際こういう人だったのかなと想像しながら読み、時空を冒険しているような気分になりました。ピカソの戦争への怒りや悲しみ、衝撃は、今を生きるわたしたちも同じく感じているものだと思います。
そして同時多発テロ。こちらも人間による人間への攻撃。時代が変わっても今もなお変わらず存在し続ける問題に勇敢に向き合っている作品だと思いました。それと同時にわたしたちは、ピカソが生きていた時代から人間として何も変わっていないということを何度も実感させられました。
そして、アートが持つ力。詳細に描かれている文章よりも、たった1枚の絵が伝える大きなインパクト。暗黙のゲルニカを読んで、改めてアートは言葉以上に伝えるスピードが早く衝撃も大きいと思いました。原田マハさんの作品の持つ、力強さにまたまたハマってしまいました。
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