村上春樹「風の歌を聴け」大学生と鼠のある夏の出来事を描いた小説

「風の歌を聴け」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「風の歌を聴け」を読んだきっかけ

学生時代、村上春樹を好きな友人に「ノルウェイの森」を薦められました。読み終わったあと、すっかり村上春樹の描く世界に魅了されて、「ダンス・ダンス・ダンス」や「羊をめぐる冒険」などを読み漁り、「風の歌を聴け」も読みました。

ですので、デビュー作であるこの小説にたどり着くのは、村上春樹っぽく言うと、朝食にとびきり苦いコーヒーを飲むくらい自然な成り行きだったのです。

どんな小説?

大学生である「僕」と「鼠」のある夏の出来事を描いた小説です。季節が夏の小説はたくさんあるのですが、それらは日本の気候特有のじめっとした夏という描写のものが多いと感じます。しかしこの小説ではそのような気候を感じさせず、まるで異国のようなどこか乾いた空気が漂ってます。

ストーリーはというと、なにか大きな事件が起こるわけではありませんが、凝った言い回しで綴られているため飽きることなく読み進められます。「僕」と「鼠」、「僕」と「小指のない女の子」。この二つの関係が変化していくのを楽しむ小説だと思います。

あらすじ

中学三年生のときの「デレク・ハートフィールド」という作家の本を手にいれた「僕」。

彼の小説に影響を受け、「僕」は文章について深く考えるようになります。20代最後の年になった「僕」は、大学生のときのある夏休みを思い出します。それは1970年の夏。8月8日から8月26日までの18日間の物語。大学生の「僕」は夏休みを利用して地元に戻ります。

「僕」は夏休みに特になにをするわけでもなく、夜になると「ジェイ」と呼ばれている中国人が経営する「ジェイズ・バー」に足しげく通います。そのバーでは「鼠」というあだ名を持つ青年が、たいてい一人で酒を飲んでいました。彼と「僕」は大学生になって間もない頃に出会った友人同士です。ジェイズ・バーで二人はたわいもない会話をしながらビールを飲みます。

ある日、いつもと同じように「僕」がジェイズ・バーに行くと、あいにく鼠は来ておらず一人で飲むことになります。そこで「小指のない女の子」と出会います。女の子は泥酔していて床に倒れていたのです。「僕」はその女の子を介抱し、彼女の家まで送り届けます。しかしその女の子は「僕」に良い感情は抱かずにそのまま別れてしまいます。

それからしばらくして「僕」はレコードを買うために偶然入ったレコードショップで、その女の子と再会することになります。淡々と綴られるある夏の出来事。たった18日間の物語なのに読む者の心を惹きつける青春小説がここにあります。

読んだ感想

村上春樹のデビュー作であると意識して読み始めたのですが、途中から話に夢中になりすぎて、そんなことも忘れて没頭していました。他の誰にも真似できない、一読して村上春樹だとわかる文章は、デビュー作の時点で完成していたと思いました。

またあとがきでは、「僕」が強い影響を受けた作家である「デレク・ハートフィールド」の墓を村上春樹が訪れたときのことを書いています。

そして、ここまでが「風の歌を聴け」なのだと思いました。あとがきを含めてこの物語は完成するのだと思いました。ネタバレになってしまうのでこれ以上は詳しくは書きませんが、未読の方は読み終わったあとに「デレク・フィールド」を検索してみてください。私がなにを言いたかったのかが理解できると思います。

最後に、村上春樹の小説の中ではこの作品は短い部類にはいるので、村上作品を一度も読んだことがないという方は、読みやすいこちらの作品からはいるのもいいかと思います。難解な内容ですが、すらすら読めるのでお薦めです。

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