「滅びの前のシャングリラ」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。
「滅びの前のシャングリラ」を読んだきっかけ
この本の著者が、2020年の本屋大賞受賞作の作者・凪良ゆうさんということで、発売前からずっと気になっていました。そんなとき、ある人からたまたま本書を頂いたのが読むきっかけになりました。
どんな小説?
この物語は4つの章から構成されており、それぞれの章で語り手が異なる連作短編集です。舞台は、一ヶ月後に小惑星が衝突して滅びる地球。
主人公たちは、平穏だと思われていた日常が荒廃していくのを目の当たりにすることになります。
余命宣告を受けた人類は、破滅をただ待つことしかできないのだろうか?生きる意味について考えさせられる物語です。
あらすじ
17歳の高校生・江那友樹は、特にぱっとするところのない、ぽっちゃりした男の子です。そんな友樹は、同じクラスの井上に目をつけられてしまったことが原因で、いじめられっ子になってしまいます。
井上やその仲間たちのせいで、思いを寄せている同級生・藤森雪絵に、情けない姿を晒してしまうこともありました。それでも、ユーモア溢れる想像力で、みじめな生活を切り抜けていく友樹。
しかし、そんな灰色の日常が、思いもよらぬ事態をきっかけに急激に変わっていきます。
それは「一ヶ月後に小惑星が地球に衝突する」という突拍子もないニュースでした。
このニュースを境に、今まで当たり前だったものが徐々に崩壊していきます。地球は暴力や略奪、殺人など凄惨を極めた無法地帯へと変わり果ててしまいました。けれど、なんとこのタイミングで雪絵が「好きなアーティストのライブを観るために、東京へ行く」と言い出すのです。今、世の中では、若い女性が気楽に外出できる状況ではありません。
しかし、そんなことは、雪絵だって言われなくてもわかっているはず。ということは、この東京行きは何か強く思うところがあって、どうしても今決行したいのでしょう。そこで、友樹は、雪絵を守るために一緒に東京へ行くことを決意します。
雪絵は、どうしてそんな危険を冒してまでアーティストのライブへ行きたかったのか?友樹は、冴えない自分と決別して変わることができるのか?滅亡に向かって荒れ果ててしまった世界の中で、誰かを愛し、愛されることや、生きることの本当の目的について、4人の語り手の視点を通して考えさせられる連作短編集です。
読んだ感想
もし、私が今、一ヶ月後に地球が滅びるという状況に立たされていたら、後悔のない人生だっただろうか、と考えさせられました。友樹たちが住んでいる、もうすぐ滅亡する地球は、生きることの醜い部分が生々しく浮き彫りになってしまいました。けれど、この物語を最後まで読めばきっと、生きることってそこまで悪いことじゃないじゃん、と思えると思います。
結局、自分の人生の目的は自分にしか見つけることができません。しかし、それを見つけられないまま日々をなんとなく過ごしている人も多いのではないでしょうか。だから、友樹たちが、最後の最後になってしまったけど、大切なものを見つけられたことが、せめてもの救いになりました。
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