中上 健次おすすめ小説11選【読書好き21人の声を集めました】

中上 健次は1946年生まれの純文学作家で、自身の出身地である紀伊半島を舞台にした作品が多く見られます。

今回、読書好きの方々にアンケートをとり、中上 健次の作品から一番好きな1冊を選んで感想を書いてもらいました。その結果を感想とともにお伝えします。

「岬」5票

作家の郷里・紀州の小都市を舞台に、のがれがたい血のしがらみに閉じ込められた青年の、癒せぬ渇望、愛と憎しみ、生命の模索を鮮烈な文体でえがいて圧倒的な評価を得た芥川賞受賞作。

この小説は、著者独自の哀切な主題旋律を初めて文学として定着させた記念碑的作品として、広く感動を呼んだ。『枯木灘』『地の果て 至上の時』と展開して中上世界の最高峰をなす三部作の第一章に当たる。表題作の他、初期の力作「黄金比の朝」「火宅」「浄徳寺ツアー」の三篇を収める。

「BOOK」データベース

読者の声

主人公の竹原秋幸の繊細で感傷的、衝動的な気質、背徳的な行いは読む者の胸を打ちます。(29歳 男性 無職)

複雑な血の繋がりのため、幼少から心が少しずつ歪んでいった主人公が大きくなり、憎んでいた母や義父のように堕落しつつも懸命に今を生きる部分がオススメポイントです。(32歳 女性 自営業)

複雑な家庭環境で育った秋幸が自分をこんな目に遭わせた父と母を憎く思い生きていく様に人間味を感じます。(40歳 男性 パート・アルバイト)

血がつながった家族との憎悪の気持ちがあふれるほど文章のリズムとして展開されています。重苦しさと人間の性が痛いほど伝わってきます。(62歳 男性 会社員)

父親違いの義兄が自分と母親を殺すと言ったり、その義兄が自殺したり、親族間の刺殺事件があったり、精神的に病んでしまう姉がいたりと、実に様々な人間模様が描かれています。 (34歳 女性 会社員)

「枯木灘」3票

紀州・熊野の貧しい路地に、兄や姉とは父が異なる私生児として生まれた土方の秋幸。悪行の噂絶えぬ父・龍造への憎悪とも憧憬ともつかぬ激情が、閉ざされた土地の血の呪縛の中で煮えたぎる。愛と痛みが暴力的に交錯し、圧倒的感動をもたらす戦慄のサーガ。戦後文学史における最重要長編「枯木灘」に、番外編「覇王の七日」を併録。

Amazon

読者の声

出生と独特の地縁に縛られた自己の運命と苦闘する主人公の情念に満ちたストーリー(56歳 男性 無職)

家族とは何か自分とは何か、その壮絶な自問のなかで暴力に走る主人公の姿はわがことのように痛切です(60歳 男性 自営業)

熊野の貧しい家庭で生まれ育った主人公が、連綿と続く家族の血に逆らい、暴力的にふるまいつつ愛を求める姿がものすごいです。(70歳 男性 自営業)

「鳳仙花」2票

中上健次が故郷紀州に描く“母の物語”。

「秋幸もの三部作」よりも以前の時代を描く、秋幸の母・フサの波乱の半生を描いた物語。海光る3月。私生児としての生い立ちに昏い痛みを覚えながらも、美しく利発な娘に成長したフサは、十五になった春、生まれ育った南紀の町をあとにした

若々しい肉体の目覚めとともに恋を知り、子を孕み、母となって宿命の地に根をおろすフサ。しかし、貧しくも幸福な日々は、夫・勝一郎の死によって突然に断ち切られた。

子供を抱え、戦時下を生き延びる過酷な暮らしの中で、後に賭博師の龍造と子を為し、秋幸と名付ける。しかし龍造が賭博で刑務所に入っている間、他の二人の女を孕ませていたことを知り、フサは秋幸には龍造を父と呼ばせぬと宣言する……。

中上健次が実母をモデルに、その波瀾の半生を雄大な物語へと昇華させた傑作長編。

「BOOK」データベース

読者の声

複雑な家庭環境で育った少女が成長していく過程の物語。時代の背景の影響もあるが、その半生の描き方がポイントです。(52歳 男性 会社員)

フサという一人の少女が女性へとなっていく姿が、とても丁寧に描かれているところです。(45歳 女性 自営業)

「地の果て 至上の時」2票

腹違いの弟を殺害した罪により、大阪で服役していた竹原秋幸が、三年ぶりに故郷に帰ってきた。しかし、その紀州・熊野の地にも都市化の波が押し寄せ、彼が生まれ育った「路地」は実父・浜村竜造の暗躍で消滅していた―。

父と子の対立と共生を軸に、血の宿命と土地の呪縛が織りなす物語を重層的な文体で描く、著者渾身の力作。『枯木灘』『鳳仙花』に続く紀州神話の最高到達点。

「BOOK」データベース

読者の声

この作品は、筆者が著名作家になるきっかけにもなったといわれるくらいに良質の内容です。(42歳 女性 無職)

薬物や土地開発など、当時の時代背景をもとにストーリーが描かれており、暗い雰囲気ながら救いのあるストーリーが好きです。(27歳 男性 自営業)

「千年の愉楽」2票

熊野の山々の迫る紀州南端の地を舞台に、高貴で不吉な血の宿命を分つ若者たち―色事師、荒くれ、夜盗、ヤクザら―の生と死を、神話的世界を通して過去・現在・未来に自在にうつし出し、新しい物語文学の誕生と謳われる名作。

「BOOK」データベース

読者の声

荒廃的な世界と激しい血の世界。伝説とも思わせる血統に引き込まれます。(50歳 女性 主婦・主夫)

裏社会と神話的世界を合わせた物語なので、人間の原点を知るような場面もありました。(59歳 男性 会社員)

「十九歳の地図」2票

予備校生のノートに記された地図と、そこに書き込まれていく×印。東京で生活する少年の拠り所なき鬱屈を瑞々しい筆致で捉えた青春小説の金字塔「十九歳の地図」、デビュー作「一番はじめの出来事」他「蝸牛」「補陀落」を収録。戦後日本文学を代表する作家の第一作品集。 

「BOOK」データベース

読者の声

独特の世界で何か神話めいたものを感じ攻撃的な十代という青年がもつ否定的情熱が強烈すぎます。(48歳 女性 主婦・主夫)

重々しい空気とピリピリした緊迫感を、独特の筆致で描いた4つの初期短編集です。(59歳 男性 自営業)

「路上のジャズ」1票

一九六〇年代、新宿、ジャズ喫茶。デビスに涙し、アイラーに共鳴し、コルトレーンに文学を見た中上健次。「破壊せよ、とアイラーは言った」ほかエッセイを中心に詩、短篇小説までを全一冊に収める、ジャズと青春の日々をめぐる作品集。巻末にジャズ評論家小野好恵によるロングインタビューを併録する。

「BOOK」データベース

読者の声

ジャズと文学が共振していた時代を懐かしく振り返ることのできる歴史的文献だと思います。(50歳 女性 自営業)

「日輪の翼」1票

母なる土地熊野と訣別し、若者と老婆たちは冷凍トレーラーに乗って旅に出た―。高速道路を疾駆する車の中で老婆たちは御詠歌をとなえ、若者たちは旅の先々でひたする女あさりに励む。終着地は皇居前。彼らは何を探しもとめ、さまようのか?

哄笑とエロティシズム、聖と俗を活き活きと描く“現代遍歴譚”。中上文学の代表作。

「BOOK」データベース

読者の声

老婆と若者、ここに宗教観や御詠歌と言う非日常が加わり、通常の現代小説ではない世界が描かれているので興味深かった(47歳 男性 会社員)

「重力の都」1票

伏し拝むように愛撫してやまぬ男と玄妙の快楽に泣き濡れる女。かりそめに出逢い、官能の誘惑によって互いを狂おしいまでに求める二人は、導かれるように盲目の闇の中へと沈んでいった…。〈重力=物語〉に引き寄せられた男女の愉楽を、今日的な秩序を突き崩す過剰さで描く著者が、自ら谷崎潤一郎に捧げると誌し、果敢な挑戦を試みた、珠玉の連作短編集。

「BOOK」データベース

読者の声

女性との濃密な性体験と、ある種の息苦しいとさえ思われる閉鎖的な関係性。(35歳 男性 主婦・主夫)

「軽蔑」1票

トップレス・バーで働く美人の真知子と遊び人のカズさんが、夜となく昼となくくり広げる愛欲の日々…。新しい愛の形を必死に生きる男と女の運命を鮮烈な感性でとらえた長編。

Amazon

読者の声

下層の恋愛物語といった印象で、トップレス・バーから和歌山へ逃避行する描写も「純」とは違った雰囲気で描かれています。(46歳 男性 会社員)

「紀州 木の国・根の国物語」1票

新宮、古座、吉野―。神話と伝説、そして敗者の地、故郷・紀州。その自然の核を探り当てたい。生の人生を聞きたい。地霊と言葉を交わし、美しさのおおもとを見たい。漁業組合で、製材所で、食肉センターで、この土地に生まれ、生活する人々の声を求め、中上は歩き廻り、立ちどまり、また歩く。「差別」という物の怪は、まだこの地をさすらっているのか。鋭い視線で半島をえぐる旅を記録した、ルポルタージュの歴史的快作。

「BOOK」データベース

読者の声

作者が半年もかけて取材した生々しい差別の歴史を知ることができます。(45歳 女性 パート・アルバイト)

まとめ

いかがでしたでしょうか。中上 健次のおすすめ小説を紹介しました。ぜひ作品を手に取って読んでみてください。

タイトルとURLをコピーしました