「義経」義経の誕生から壇ノ浦の決戦、兄頼朝との複雑な関係を経て迎えた、悲痛な最期までが丹念に書かれた小説

「義経」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「義経」を読んだきっかけ

古本屋で出会いました。司馬遼太郎の本はかなり多くの作品を読んでいる自分ですが、平安時代を扱ったものは余り読んでいないことに気づき、手に取りました。

瀬戸内沿岸で育ったので、源平合戦のエピソードは子供の頃からたくさん聞かされています。ですが、平家びいきの土地柄の為、義経、頼朝に関しては余り深く考察したことがなかったのです。源氏の目線から源平合戦を見てみたいと思ったのが、この本を手にしたきっかけです。

どんな小説?

この物語は源九朗義経の誕生から壇ノ浦の決戦、兄頼朝との複雑な関係を経て迎えた、悲痛な最期までが丹念に書かれています。どうあっても相容れない兄弟の確執には多くの頁を割き、読者の共感を引き出します。

乱世の兄弟とはここまで理解し合えないものなのか、と考えさせられました。書き手は中立の立場をとっています。読者は、時には義経の武勇に歓喜し、時には頼朝の英断に感服します。これは司馬遼太郎の卓越した筆力によるものでしょう。

あらすじ

平安末期、平治の乱により没落した源氏の庶子、源義経は不遇の運命の下に生まれました。母、常盤は赤子の義経を抱いて都落ち、宿敵平清盛の囲われ者となります。

やがて義経は養父の下で育てられますが、没落武者の九番目の子供は、どこにあっても落ち着ける場所はありません。自分の居場所を探すかのように、義経は東国へと旅立ちます。

いつの日か、鎌倉に幽閉されている兄頼朝と対面し共に父の無念を晴らすことだけが望みであり、生涯をかけた夢でした。義経は奥州平泉、藤原秀衡の元に身を寄せます。ですが、平泉も義経の居場所ではなく、源氏再興の旗揚げをした頼朝と合流します。源氏の嫡子頼朝と、雑仕女の子である義経との間には大きな壁があることを、義経は生涯気づきませんでした。兄頼朝は義経を己の家人同様に扱います。

それは頼朝にとって当然の処置であり、政治判断でもありました。都育ちで自分の血筋に誇りを持っている義経には理解できません。頼朝の馬を引かされる義経は哀れで、孤独でした。

源平合戦が始まると次々に華々しい戦果を遂げる義経ですが、頼朝の政治的思惑は理解できません。義経の陣営には梶原景時らが補佐として参戦していましたが、彼らは頼朝に大将の行動を報告する密偵のような存在でした。

義経は人と共闘することができません。常に一人で結論を出し、一人で部下を追い立てます。人望が無く、協調性も無い義経は景時らに誹謗中傷を報告されても、それを改善したり反省する姿勢はありませんでした。源氏の陣営で義経は孤立していきます。後白河法皇はそうした義経の弱みを利用し、頼朝と完全に引き離すことに成功するのです。

心はいつも鎌倉殿を思う義経ですが、いつまで待ってもどれほど武功を立てても兄は振り向いてくれません。義経は武士の世を作ろうとする兄頼朝の理想に反する行為ばかりしてしまいます。正しき嫡子頼朝と哀れな庶子義経の溝は埋まることはありませんでした。

読んだ感想

義経の人格はやはり指導者として問題があるな、という印象です。戦略の天才は人略の天才にはなりえなかったのですね。

現代の職場における人間関係などを大いに考えさせられました。司馬遼太郎の「義経」は兄弟どちらにも同じだけの共感を呼びます。読者が判官びいきに陥らない配慮なのでしょう。兄も正しい、弟も哀れです。

でも二人の間には共有する物が何一つ介在しませんでした。他者を必要としない義経、彼がもっと愛される環境に育っていたならば、もっと頼朝と歩み寄れたのかもしれません。

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