「センセイの鞄」大人の愛を描く作品(あらすじ・感想)

「センセイの鞄」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「センセイの鞄」を読んだきっかけ

書店で、ふと目にし、タイトルに惹かれて、本を手に取りました。数ページ読み、やわらかで透明がかった淡い雰囲気の文章が好きだな、と感じました。最後まであっというまに読めそうだな、と思い、購入しました。

どんな小説?

「センセイの鞄」は、川上弘美著のベストセラー小説です。第37回2001年度谷崎潤一郎賞を受賞しています。40歳手前の主人公ツキコと、70歳代のセンセイが偶然再会したことから物語は始まります。

2人が紡ぐ、日々と淡い恋と大人の愛を描く作品です。2003年には映画化されています。ツキコを小泉今日子が、センセイを柄本明が演じています。

あらすじ

40歳手前の主人公ツキコは、ある日、居酒屋で高校時代の先生と再会します。最初は先生の名前も思い出せないほどで、ツキコは彼を「センセイ」と呼ぶことにしました。センセイはツキコを「ツキコさん」と呼びました。何度か居酒屋でばったりと出会っては、たわいもない話をするうちに、2人はゆっくりと親しくなっていきます。

時には、センセイのお家にお邪魔したり、キノコ狩りに出かけたり、喧嘩のようなものをしてみたり。やがて、2人の間には淡い恋が自然と生まれていました。

ツキコは高校の同級生である「小島孝」に再会したことで、逆にセンセイへの恋心を深く募らせます。ある日ツキコはセンセイの家で深酔いしてセンセイのことが好きだと告白します。センセイはツキコを島への旅行に誘います。その島で死別した妻への思いをツキコに話しました。ツキコはショックを受け、センセイのことを忘れようとしますが、やがてセンセイはツキコを受け止めます。

ツキコはセンセイに少女のように甘えてみせます。センセイはいつも飄々として、それでいて上品です。大きな大人の愛でツキコを包み込みます。2人は再会から2年、正式なお付き合いをして3年、一緒に過ごしましたが、センセイは、先に逝ってしまいます。ツキコのもとには、センセイがいつも持っていた鞄が遺されていました。

読んだ感想

この作品の好きなところは、「生臭さがないところ」です。淡い文体がそうさせるのか、知的で絶妙な枯れ加減で描かれるセンセイがそうさせるのか、恋愛に関する生々しさが少ないです。

その分「死」に関する生々しさが、小説全体をうっすらと漂っています。センセイの年齢設定を考えると当然かもしれません。だけどそれが生臭くありません。冷たすぎることもありません。淡々と、日々に横たわる生と死を描いている、そんな感じがします。読了後は、あたたかさと清々しさを同時に感じることができる作品だと思います。

また、好きな特に文章は次の部分です。

「中学、高校と、時間が進むにつれて、はんたいに大人でなくなっていった。さらに時間がたつと、すっかり子供じみた人間になってしまった。時間と仲良くできない質なのかもしてない」

お花見の際に、高校の同級生の小島孝に会い、ツキコが思っているところです。この文章が、ツキコの人物像や今までの人生を色濃く表していると思います。

全体的に、日本語が美しい小説です。ぽつり、ぽつりと、2人が交わす会話も丁寧語で、美しさが漂います。「最後まであっというまに読めそうだな」と思い購入しましたが、一行一行、ゆっくりと読みたくなる、そんな小説でした。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。電子書籍はありません。

他の電子書籍サイトでも「センセイの鞄」の電子版は読むことができません。

honto では、紙の本を購入することができます。

タイトルとURLをコピーしました