「新世界より」がどのような作品なのか、読者が書いた小説のあらすじと感想です。
読んだきっかけ
この小説を読んだきっかけは小説好きの友人がぜひ読んでほしいと紹介してくれたからです。『新世界より』というタイトルを聞くとドボルザークの「交響曲第九番」や「家路」を想像してしまいます。
小説はあまり読まない私ですが、なぜ音楽を連想させるタイトルなのか?深い意味があるのだろうか?と気になって読み始めました。
どんな小説?
「新世界より」は貴志祐介のサイエンス・ファンタジー作品です。
物語の舞台は1000年後の世界。そこでは人々が呪力という魔法のような力を身に付けています。なんだか楽しそうな世界に思えますが、物語の初めから不安要素となる鍵がちりばめられています。
作者が30年にもわたって構想した世界は壮大なスケールです。読み終わったときは「唖然」という言葉しかありませんでした。
あらすじ
舞台は1000年後の日本「神栖66町」という集落です。神栖66町は1000年後の世界にもかかわらず、現代よりも前時代的な生活様式です。電気の発電方法は水車、建物の多くが木造建築、移動手段は船など。
また、神栖66町はなぜか注連縄で囲まれています。そして「子供だけで注連縄の外に出てはならない」という規則があります。町の大人たちは何かに怯えている様子です。
物語の主人公は12歳の少女、渡辺早季です。この世界では12歳くらいに呪力が発現します。呪力が発現すると小学校「和貴園」を卒業し、呪力の訓練を行う「全人学級」に進学できます。
早季に呪力の発現がないことを両親は取り乱すほどに心配していましたが、和貴園の残り2人というところで無事に呪力が発現しました。全人学級は班に分かれており、早季は和貴園の友人らの6人で行動を共にしていました。
彼ら夏季キャンプで“子供だけで注連縄の外に出る”ことになります。好奇心の強い彼らは行動範囲を抜け出し、先史文明が遺した自走型端末「国立図書館ミノシロモドキ」に出会います。
ミノシロモドキから先史文明からどのような経緯で今に至るのかを知った主人公らは神栖66町の不可解な点を思い起こします。彼らは町の体制や、大人たちに反抗心を持ちます。
また、禁断の知識を知ってしまった彼らは町に無事に戻れるのかという疑念も生じます。血塗られた歴史は12歳の彼らにとっては辛すぎる真実であり、どうすれば良いのかという葛藤がそれぞれの心にあります。
町の大人たちが恐れている最悪の事態とは何なのか、選ばれた子供である主人公は決断を迫られます。
「新世界より」を読んだ感想
自分たちが使っている便利なものはたくさんあります。それらが生み出されたことで消えていく何かもあるのです。
人々は消えていったものには無関心です。今は消えてしまったものにも想いを馳せる必要がある、これが「新世界より」のテーマではないかと考えます。呪力のある人間が消えていった何かに無関心であるということです。
このメッセージを伝えるにはドボルザークの「新世界より」という楽曲の旋律、または「家路」です。作中に「家路」に関係した表現が存在しています。最後まで読むとこの秘められたテーマに気がつくことができるはず。ぜひ読んでいただきたいと思います。
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