「博士の愛した数式」家政婦と息子と、と記憶が80分間しかもたない初老の数学博士との日常

「博士の愛した数式」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「博士の愛した数式」を読んだきっかけ

随分と前からタイトルだけは知っていて、気になっていました。数学の苦手な私は「数式」という単語に多少の嫌悪感を抱いていたのですが、同じ著者の他の本が面白かったことと、本に詳しい友人が好きな作品だと言っていたのを思い出し、手に取ってみることにしました。

どんな小説?

交通事故により脳の記憶機能に障害を引き起こしてしまった初老の数学博士と、その博士のもとに家政婦として通うようになったシングルマザーの主人公、そして小学生である主人公の息子、三人を中心とした心の交流や日常に起きる些細な出来事を中心に描いた作品です。

数学博士の専門分野である数式の話や、主人公の息子は熱烈な阪神ファンであるため、物語と絡めて野球の試合の描写、懐かしい選手の名前も度々出てきます。

あらすじ

家政婦の派遣事務所では最年少ながらもキャリアの上ではベテランである主人公。事情があって、シングルマザーという決断をし、一人で小学生の子どもを育てています。

ある日、主人公は、いわくつきの顧客を紹介されます。何人もの家政婦がそこには居つくことができず、次々と首になってしまったというのです。恐る恐る主人公が面接に出向いてみると、雇い主は一人の老婦人でした。老婦人は交通事故により脳に障害を負ってしまった義弟のために、家政婦を雇っているのでした。

事故の前は大学で研究者として働いていた初老の男性を、主人公は博士と呼びます。博士の記憶は80分間しか持たないという特殊な状況のもと、博士は博士で苦労を重ね、主人公も主人公で工夫を重ねながら、友好な関係を築いていきます。

何しろ、80分後に記憶が消えてしまう博士にとっては、主人公は毎日、初対面の家政婦なのです。博士は彼女を思い出すために、背広じゅうに貼り付けたメモの一つに、彼女の似顔絵を描いて貼り付けるのでした。ある日博士は、主人公に小学生の息子がいると知ると「子どもを一人にしてはいけない。母親と一緒に過ごさねばならない」という信念のもと、毎日放課後に息子を自分の家に来させるように主人公に言いつけます。

数学の博士らしく、博士は少年をルートと呼びます。数字に関する宿題を出したり、野球少年でもあるルートの大好きな阪神の話で盛り上がったりと、博士とルートは交流を深めていきます。

大人である主人公と同等に、あるいは主人公よりも更に深く、ルートは博士の持つ痛みや傷を深く理解するようになっていきます。博士、主人公、ルートの三人で阪神戦を観戦したり、ルートの誕生日のお祝いをしたりと、記憶の持たない博士との温かく貴重な関係がじっくりと築かれていきます。

読んだ感想

子どもという美しく可能性に満ちた存在そのものを心から敬い愛する博士の姿やルートとの会話には胸を打たれるものがありました。一方で、ルートが博士を深く理解する心、彼の驚くべき共感力には何度もはっとさせられつつも心が温まります。

そしてまた、病気の進行という過酷な現実には物事の非情さを思い、読む側も感情移入をせずにはいられませんでした。この小説の別の側面としては、野球が好きな人にとっては、忠実に実際の試合中継の再現がなされていることもあり、

また違った楽しみ方ができる小説なのではないかと思います。素数や数式といったほとんど馴染みのない話も頻繁に出てきますが、博士の数学への愛情に満ちた言葉で語られるため、苦手意識のある人にも十分に楽しめる数学トリビア講座にもなっています

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