「六番目の小夜子」地方の高校で受け継がれる奇妙なゲーム【あらすじ・感想】

「六番目の小夜子」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「六番目の小夜子」を読んだきっかけ

小説って面白い、と思い始めた高校生の頃に書店で見つけ、謎めいたタイトルと、赤い背景にセーラー服の女子生徒という印象的な装丁が気になり、手に取りました。

裏表紙のあらすじを読み、当時の自分と同世代の高校生が登場する、ミステリー色のある学園ものというところにも魅力を感じました。

どんな小説?

地方の高校で受け継がれている、奇妙なゲームにまつわる小説です。

ある年の春から次の春を迎えるまで、季節ごとの五章からなり、登場人物がゲームに興味を持ったり怯えたりしながら翻弄される様子だけでなく、学校という閉鎖的な場所のもつ空気や、十代特有の強さ、純粋さ、危うさなどが、さまざまな形で描かれ、懐かしさを誘うような作品でもあります。

あらすじ

伝統ある、地方のとある高校。その高校では三年に一度、見えざる手によって選ばれた者がその年の「サヨコ」となる、という奇妙なゲームが受け継がれています。

口にすることがためらわれるような不吉な、けれどその高校の生徒なら誰もが知っていて少なからず興味も持っている、暗黙の了解のもと行われいるゲームなのです。

「六番目のサヨコ」の年、その高校に、津村沙世子という転校生がやってきます。容姿端麗、頭脳明晰でありながら、人懐こい面もある彼女は、すぐに同級生たちの注目の的となります。クラスメイトの雅子は、完璧な沙世子に同性ながら憧れを持ちます。

雅子に恋心を抱く、明朗快活な由紀夫や、由紀夫と仲が良く、大人びた秀才である秋(しゅう)も、はじめはどことなく得体の知れない沙世子の存在を訝しんでいたものの、しだいに距離が近づき、沙世子、雅子、由紀夫、秋の四人は、高校生活最後の年を一緒に過ごすようになります。

それぞれに「サヨコ」ゲームを意識しつつも、受験勉強に忙しく過ごした夏休みが終わりに近づいた頃、息抜きの遊びに出かけた四人を、ある不運が襲います。

この出来事により、沙世子の存在のミステリアスな部分と、そうではない部分とが明らかになり、拍子抜けするようでいて、物語としてはますます謎めくようでもあります。

その出来事の余韻を残したまま秋を迎え、三年生にとっては最後となる、力の入る学園祭で、「サヨコ」ゲームもいっそう存在感を放ちます。

多くの生徒が抱える「サヨコ」ゲームに対する不安を煽るような、緊張感のある催し物が行われる最中、生徒たちをパニックに陥れる出来事まで起こり、不気味な予感が暗い影を落とします。そして、一連の不吉な出来事は、冬の最後の事件へと向かいます。

読んだ感想

「サヨコ」の怖いところは、集団意識的なうしろめたさや怖いもの見たさによって、普段水面下にある恐怖が蠢き、今にも姿を現しそうなところだと思います。

十代の登場人物の不安や憂いからくる不安定さもあいまって、曖昧だからこそ陶酔してしまうような恐怖感が、見事に織り込まれていると思います。

常に、現状や先のことに思いを巡らし、抗ったり、呆然と立ち尽くしたりと、悩み惑う日々。すぐ近くにそんな季節の終わりが迫っていることに、漠然とした不安と焦燥感を抱えながら過ごす学校生活に、この上ない懐かしさを覚え、心地良い心許なさが色濃く漂う読み心地です。

高校の校舎や部室、近くの古い喫茶店の描写など、全体に古風な雰囲気もたまりません。初めて読んだ高校生の夏以来、たびたび手に取り、その雰囲気に浸らずにはいられない小説です。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。

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