「黒い兄弟」イタリアに売られたスイス生まれの貧しい少年が煙突掃除夫として働く物語【あらすじ・感想】

「黒い兄弟」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「黒い兄弟」を読んだきっかけ

「黒い兄弟」を読もうと思ったきっかけは、この作品を原作にしたテレビアニメを観たからです。貧困による児童労働を問題提起しており、よりくわしく内容を知りたくなったので原作を探しました。

本の厚さから、きっとアニメよりもかなり長い話なのだろうなと思いました。

どんな小説?

スイスの貧しい村に育った少年がイタリアに売られ、煙突掃除夫として働く物語です。

物語前半で実在の事件(19世紀。スイスからイタリアへ売られていく少年たちが乗せられた船が途中で沈んでしまい、多くの少年が死亡。主人公は架空の人物ですが、その事故の生存者の一人という設定)をモチーフにしているため、過酷な状況下に置かれた描写の多い、社会派の作品です。

あらすじ

(※「黒い兄弟」のあらすじは、この作品を基にしたアニメとはかなり異なる部分(主人公の名前や設定。後半の展開)が多いです。これは小説「黒い兄弟」のあらすじです)

スイスの農村で育った少年ジョルジョは日照りの年、人買いに売られてしまう。人買いに買われた貧しい少年たちはスイスの湖から船で運ばれ、イタリアで煙突掃除夫になることになっていた。

煙突掃除は危険な仕事なので、外国から売られてきた子どもたちがその仕事に就かされていた。

(煙突は高いので落下したら危険なだけでなく、灰を吸い込むので人体にもよくない。また細い煙突の中に入るには煙突掃除夫も細身でなくてはならないので、大人より子どものほうが入りやすいという理由で貧しい子どもたちが過酷な条件で働かされている。)

ジョルジョがイタリアにつく途中で仲よくなった少年アルフレドとともに船に乗せられた日、天候はよくなかった。結局船は沈み、多くの少年はイタリアにつくことなく亡くなってしまう。

ジョルジョとアルフレドはなんとか助かる。ジョルジョは自分のそばで溺れそうになっている人買いの命をも助ける。人買いは「助けてくれたからといって自由の身にはしないが、たったひとつだけなら願いをきいてやる」と言う。

ジョルジョは願いごとをせずに、イタリアに売られていく。アルフレドとは別々の親方のところへ売られていき、慣れないながら煙突掃除を頑張るジョルジョ。

しばらくしてジョルジョはアルフレドと再会するが、彼を買った親方は特にひどい親方でアルフレドの体は衰弱していく。とうとうアルフレドは亡くなる。

通常、煙突掃除夫は死んでも葬式をあげない。葬式にはお金がかかるし、仲間の葬式に他の煙突掃除夫が出席する時間があれば、その時間分働かせたいというのが親方たちの本音だった。

ジョルジョは、かつて人買いがひとつだけ願いをかなえると言ったことを思い出し、アルフレドの葬式をあげる。その後、劣悪すぎる環境から逃亡することに成功。母国スイスにもどってくることができた。

読んだ感想

実際にあった社会問題をテーマにしているため、かなり重い話です。それでも最後まで一気に読むことができたのは、過酷な状況下で輝く少年達の友情の絆のすばらしさ、そして著者リザ・テツナーの筆力のなせる業です。

劣悪な労働環境のため主人公の親友アルフレドは若くして命を落としてしまう展開は涙なくしては読めませんでした。そのぶん、あまりにひどい環境から脱することができた主人公には心から良かったと思えました。

児童労働問題や児童にかかわらず就労に関する問題は世界規模でみれば現在もいたるところで未解決の課題があることを、強く考えさせるきっかけとなった一冊です。

そして、重く苦しい問題提起になりがちな国際問題(この作品の場合は、危険な仕事を外国から買われてきた子どもたちに押し付けている)を小説として完成させた著者の才能は素晴らしいと思います。

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