「明るい夜に出かけて」ラジオを題材にした小説【あらすじ&感想】

「明るい夜に出かけて」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「明るい夜に出かけて」はどんな小説?

「明るい夜に出かけて」は、佐藤多佳子による深夜ラジオを題材にした小説です。

この小説の面白いところは、何と言っても実在するラジオ番組や芸能人、そして主人公の住む神奈川県追浜周辺にある大学など、実在するエンターテインメント作品や固有名詞が出てくるところです。

主人公は、とある事情で1年間の猶予付きで大学生活から「脱出中」の富山。作中に実在するラジオ番組、人物名、地名などが登場することによって、私たち読者は、富山のラジオライフを見守りつつ、どこか自分のリアルな日常と小説の世界がリンクしているような気分になります。

「明るい夜に出かけて」あらすじ

主人公の富山は、深夜のコンビニで働く男の子です。接触恐怖症であり、あるトラウマから、特に女子大生や女子高生が大の苦手。

ラジオのヘビーリスナーである富山は、「アルコ&ピースのオールナイトニッポン(通称アルピーann)」の大ファンで、アルピーannの生放送がある金曜日は絶対にシフトに入らないと決めているほど。

そんな富山、以前はその名を知らない者はいないほどの有名なハガキ職人でした。

主人公の富山、高校からの腐れ縁である同級生の永川、コンビニを訪れた天才的なセンスを持つ女子高生ハガキ職人の佐古田、バイト仲間で歌手の鹿沢。この4人が関わりあって話が展開していきます。

富山のバイト仲間であり、歌い手の鹿沢。心ではぶつくさ文句を垂れるくせにそれを口に出せない富山は、嫌だ断ろうと思いながらも、アメーバピグで催されるフリートークの台本を書いたり、佐古田の高校の文化祭に行ったり、鹿沢の出演する歌い手たちのライブに行ったりします。

佐古田の手掛けた劇「明るい夜に出かけて」に触発されて、心に浮かんだイメージの断片をスマホのメモアプリに書き留めていく富山ですが、それをうっかり鹿沢に見られてしまったうえ、「歌詞を書いてみない?」と誘われてしまいます。

さらに、富山にとって、毎週の楽しみであり、心の拠り所でもあったアルピーannの放送が終了してしまうかもしれないという窮地に!富山たちアルピーannリスナーの祈りは届くのか……?

「明るい夜に出かけて」感想

過去のトラウマから他人とのコミュニケーションを苦とする富山ですが、かつて腕の立つハガキ職人だったこともあり、心の中での彼の毒づきは単なる暗いものではなく、ユーモアやセンスにあふれていて面白いです。

富山のウリは鋭いツッコミだけれど、トラウマを振り返り「どうして駄目だったのか、自分でもわからない」と苦悩する場面の切なさは何とも胸に迫るものがあります。

永川や佐古田、鹿沢は、富山がラジオを自身のプラットホームとしているように、それぞれにリアルとは別のプラットホームを持っており、富山が文化祭やライブに赴くことによって、彼らひとりひとりの「自分の愛するもの」に対する姿勢や、リアルでの苦悩などを垣間見ることができます。

安心して心を預けられる場所がある、リアルで疲れ果てても心を癒す場所がある、自分もそういう場所や仲間が欲しい、そう思える物語です。

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