「神の子どもたちはみな踊る」村上春樹の短編集【あらすじ・感想】

「神の子どもたちはみな踊る」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「神の子どもたちはみな踊る」を読んだきっかけ

村上春樹の小説は基本的にすべて面白いので、この作品も面白いに違いない、と思い、読んでみる事にしました。この小説を選んだ理由は、単純に、村上春樹の小説を全て読んできて次がこの小説だった、というだけです。

しかし、タイトルの「神の子どもたちはみな踊る」という名前も、神という神聖なものと踊りという大衆的なものが合わさっていて、興味深かったので、読む前から期待感はありました。

どんな小説?

この小説は短編集で、面白い作品が6編含まれています。「UFOが釧路に降りる」「アイロンのある風景」「神の子どもたちはみな踊る」「タイランド」「かえるくん、東京を救う」「糖蜜パイ」といった作品です。

基本的に、どの作品もよく出来ていて、深く読み込めば何か得る物のある作品群だと思います。気持ちのいい爽快感はないのですが、深くしみじみと沸き起こってくるような、静かな感動があり、良い小説を読んだ後の浮遊感のようなものを体験したければ、読んでみる事をお勧めします。

あらすじ

「UFOが釧路に降りる」は、妻が家出して、傷心旅行のようなものをする男の話です。全てが成り行き任せのような状態で進行していって、自分は何をしているのだろう、といった疑問を抱く男の話です。

「アイロンのある風景」は、海岸でたき火をする絵描きと女の子の話です。話の中で、絵描きと女の子は、たき火が燃えていく様子を静かに見ています。女の子は、このたき火が燃え尽きたら絵描きと一緒に自殺しようと約束するのですが、たき火の途中で眠りに落ちてしまいます。その後は一体どうなってしまうのか、不思議な読後感のある優れた小説ですので、未読の方にはおすすめです。

「神の子どもたちはみな踊る」は、主人公が、都会の地下鉄で人ごみの中でふと見つけた男の後をついていくという話です。物語が進むにつれて、展開に意味が与えられていって、男の後を付けていった先で何が起こるのか、内容に引き込まれやすい、魅力的な小説だと思いました。

「タイランド」は、医者の国際会議でタイを訪れた女医が、薄汚い村に住む現地人の老女から、あなたの体の中には、石がある、と聞かされる話です。

国際会議が終わり、一週間の休みを取った女医は、休暇中の案内を務める運転手と親交を結ぶのですが、そこで展開される内容が静かで、澄んでいて、洗練されていて、落ち着いていて、とても魅力的です。話の筋を楽しむ物語というよりは、そこに展開される空気を楽しむ話といった方が適切かもしれません。とてもいい雰囲気をもった作品だと思います。

「かえるくん、東京を救う」は、銀行に勤める冴えない男が、身長2メートルはある「かえるくん」と呼ばれるカエルと遭遇し、一緒に「みみずくん」と戦ってください、とお願いされる話です。不思議な話で、話の展開も予想の付かない筋を辿り、全体としてとても魅力的な話だと思いました。

「糖蜜パイ」は、微妙な平衡の上に成り立っている3人の仲のいい男女の話です。内容的には、劇的なストーリー展開があるわけではないのですが、人物の描写がよくできていて、価値観の違いや些細な会話の中に、面白さがある作品です。

読んだ感想

村上春樹の作品を読んでいると、彼の人生経験の深さ、物事を洞察する力の強さが分かります。世界を深い所まで探求し、人という物を深い所まで知り尽くしている、という気がします。

この作品でも、「アイロンのある風景」やその他の作品を通して、彼の抱える苦しさや人生哲学の奥深さの断片のようなものを見出す事ができるような気がしました。

しかし、それでいて、村上春樹は、この世界の美しさや感動を、小説を通して表現する事に熱心であり、この点は、彼の優れた精神の表れであると思いますし、それは、この小説にも表れていると思います。 独自の魅力的な世界観を表現する作家として、村上春樹以上の人はいないと思います。

この小説も、豊かな想像力と優れた構成、不思議さや浮遊感を放つ領域に達している文章力などで出来ており、村上春樹が、論理的構成力、創造力、文章力、の全てを持つ優れた作家であることが分かります。作中でも、村上春樹の魅力が随所に表れており、未読の方には、ぜひおすすめしたい一冊だと思いました。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。電子書籍はありません。

他の電子書籍サイトでも「神の子どもたちはみな踊る」の電子版は読むことができません。

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