「オツベルと象」資本家であるオツベルと労働をする白象【あらすじ・感想】

「オツベルと象」がどのような作品なのか、読者によるあらすじと感想です。


出典:https://www.amazon.co.jp

「オツベルと象」を読んだきっかけ

宮沢賢治の作品にハマって色々読んでいた所、タイトルから特徴があり、所謂ブラック企業の事を描いているという前情報を見つけました。

私自身ブラック企業と言える会社で働いており、You Tubeなどでブラック企業ネタの動画を見る事がよくあるので、興味を持って読んでみました。

どんな小説?

「オツベルと象」は1926年に「月曜」という雑誌に掲載される形で発刊された宮沢賢治の数少ない生前発表作品です。

資本家と労働者の関係を人間と動物に例えて表したお話しですが、賢治の信仰していた仏教の世界観も同時に表しています。

象は仏教で崇められている存在の動物であり、その「象をぞんざいに扱った者の末路」という別のタイトルを付ける事も出来る様に思います。

あらすじ

ある牛飼いがお話を物語る形でストーリーが進行していきます。ある日、町で指折りの資本家であるオツベルの経営する工場に一匹の白象がやって来ました。

オツベルは最近は白象を怯えながら見ていましたが、どんどん工場の奥に入って来て、機械に興味津々になって見ている白象を見てオツベルは白象に「ずっとここにいたらどうだい?」と尋ねた所、白象は了承し働く事になりました。

しかし実際はオツベルが言葉巧みに騙し自分の所有物にしたのでありました。白象が逃げ出さない様に、重い鎖と分銅を体にかけさせました。オツベルは最初は少しの水汲みをさせる程度で、白象も楽しく働いておりました。

しかし税金がどんどん上がっていってるからという理由で、九百把の薪運びや、半日鍛冶場での炭火吹き等どんどん仕事の過酷さを上げていきました。

それだけでなく白象の餌も徐々に減らしていき、最初は十把あった藁も七把しかあげないようになっていました。最初は藁もちゃんと食べ、毎晩月に向かって楽しいなと口にしていた白象も段々弱っていき疲れを口にする様になりました。

さらに労働は過酷さを増し、藁もさらに三把になっていました。ここまでくると白象もオツベルを軽蔑して見る様になりました。ある晩力尽きそうになった白象が月にさよならを言いました。その時月が話しかけてきました。

月は白象を元気付け仲間の象達に手紙を書く様にと勧めました。紙も筆も無い状況でしたが、突然どこからともなく赤い着物の童子が硯と紙を持って現れました。

白象は手紙を書き童子に渡しました。童子はすぐに仲間の象達に手紙を届け、手紙を読んだ白象の仲間達は激怒し、「グララァガァ」と掛け声を一斉に上げ、オツベルをやっつけ白象を助け出すためにオツベルの屋敷に攻め込みました。

オツベルも銃を持って、立て篭り応戦しましたが、最早力の差は歴然で象達に踏み潰されました。そして白象は無事仲間達に助け出されました。

読んだ感想

宮沢賢治の数少ない生前発表の作品です。序盤の雰囲気がのほほんとした様に感じられたので、タイトルから見た感じでも、オツベルと象が温かく交流していくのかと思いましたが全く違いました。

まず読んで1番に思ったのが、話のテンポがとても良く、賢治得意の造語による擬音もその場に合っていて全く違和感を感じない、なんならこんな音を実際に出しているんじゃないかと感じられ、賢治らしさが詰まっていると思いました。

短くサクッと読める中にも賢治の伝えたい意図が随所に含まれています。全体を読んでみてまず思ったのは、オツベルの身なりと贅沢な食事、常識外れな労働の強要と最終的には奴隷にした白象の仲間達に倒される所から、資本家と労働者の対立を描いているのがわかりました。

私個人として思ったのは、どちらかというとオツベル寄りの裕福な家庭に生まれ、父親とも確執のあった賢治なりの父親に対する反発も多少なりとも作品にあったのではないかと思いました。

またオツベルにも大したもんだと言う権力者に対する皮肉にも似た褒め言葉と取れる表現もあり、白象にもオツベルといい関係を作れなかった自責の念も最後の方に感じられ、全体を通して中立的に描かれていると思いました。賢治なりの優しさを作品の随所で感じました。

Amazonや楽天で購入して読むことができます。

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